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不動産業務でGISを活用しよう!物件調査・エリア分析に役立つユースケースを紹介

投稿日: 最終更新日:
この記事はQGIS 3.44を使用しています。

この記事でわかること


  • 不動産業務でQGISを活用できるシーン
  • 不動産分野で使えるオープンデータの種類

こんな人におすすめ


  • 物件調査や資料作成の効率を上げたい不動産事業者の方
  • 不動産DXに興味があり、地理空間情報とGISを用いた業務効率化をしてみたい方
  • GISに興味があり、どんなことができるのか知りたい方

はじめに

物件の周辺環境を調べるために複数のWebサイトを行き来したり、紙の地図やスクリーンショットを切り貼りして資料を作ったりと、不動産の実務では、「位置」に関する情報を集めて整理する作業が数多く発生します。

こうした作業を大きく効率化できるのが、GIS(地理情報システム)です。なかでもオープンソースのGISソフトウェア「QGIS」は、ソフトウェア自体にライセンス費用が一切かからず、誰でも今日からインストールして使い始めることができます。

この記事では、不動産業務における物件調査や管理、エリア分析などの実務を想定したユースケースを通じて、「QGISでこんなことができる」というイメージをお届けします。細かい操作手順よりも、活用シーンのイメージを掴んでいただくことが目的ですので、GISが初めての方もぜひ気軽に読み進めてみてください。

不動産業界と地理空間情報

不動産の価値は「立地」と切り離せません。駅からの距離、学校区、地価の動向、災害リスクなど物件にまつわる重要な情報の多くは、位置に紐づいた「地理空間情報」です。

近年、こうした地理空間情報のオープンデータ化が急速に進んでいます。2023年には法務省の登記所備付地図データが無償公開され、2024年には国土交通省が地価や取引価格、防災情報などを一元的に集約した「不動産情報ライブラリ」の運用を開始しました。不動産業務に直結するデータが、誰でも無料で使える環境が整いつつあります。

不動産取引に関する情報を一元的に閲覧できる「不動産情報ライブラリ」(出典:国土交通省「不動産情報ライブラリ」)
不動産取引に関する情報を一元的に閲覧できる「不動産情報ライブラリ」(出典:国土交通省「不動産情報ライブラリ」

このような流れを受けて、不動産流通推進センターは「オープンデータを活用した不動産DX」をテーマにした調査報告書の中でQGISの活用例を紹介し、国土交通省も「不動産情報ライブラリ」のAPIデータをQGISで表示する方法を発信するなど、不動産業界でもQGISへの注目が高まっています。

また、国土・土地・不動産・まちづくりに関する基礎的な地理空間情報を公開している「国土数値情報ダウンロードサイト」では、QGISを活用したマニュアルが複数公開されており、不動産分野に関わるマニュアルも用意されています。

QGISによる国土数値情報活用マニュアル
QGISによる国土数値情報活用マニュアル

不動産分野におけるQGISの価値

不動産に関わる地理空間情報は、国や自治体、法務省など、さまざまな機関がバラバラの形式で公開しており、必要な情報を集めて1つの資料にまとめるには手間がかかります。

QGISを使うと、こうした位置情報を1つの地図の上に重ね合わせて表示・分析できるようになります。不動産分野でQGISが特に力を発揮するポイントは、次の3つです。

QGISのメイン画面。複数のデータをレイヤとして重ね合わせて表示できる。例として大阪市周辺の人口推計メッシュを色分けして表示
QGISのメイン画面。複数のデータをレイヤとして重ね合わせて表示できる。例として大阪市周辺の人口推計メッシュを色分けして表示

1. 無料で使えるオープンデータが充実している

国土数値情報、不動産情報ライブラリ、登記所備付地図データ、ハザードマップなど、不動産業務に直結するオープンデータが近年続々と公開されています。QGISはこれらのデータを読み込むための機能やプラグインが豊富で、オープンデータ活用の受け皿として最適です。

2. 自社のデータと組み合わせられる

管理物件のリストや過去の成約データなど、住所付きのExcel・CSVデータは地図上にプロットし、オープンデータと重ね合わせて分析できます。一般的な地図サービスでは、自社データとオープンデータを自在に重ね合わせて分析することまではできません。「自社データ×オープンデータ」の掛け算は、GISソフトならではの強みです。

3. 導入コストがかからない

QGISはオープンソースソフトウェアのため、ライセンス費用は無料です。「GISに興味はあるけれど、高価なソフトはハードルが高い」という場合でも、コストを気にせずスモールスタートできます。

不動産分野におけるQGISの活用事例

それでは、不動産分野におけるユースケースをいつくか紹介します。

ユースケース1: 物件周辺情報マップの作成

想定シーン: 販売図面や接客資料に添える、物件周辺の生活環境マップを作りたい

物件の検討者にとって、最寄り駅やバス停、学校区、周辺施設といった生活環境の情報は購入・賃借の重要な判断材料です。QGISを使えば、国土交通省の「国土数値情報ダウンロードサイト」で公開されている小学校区・中学校区、鉄道駅、バス停留所などのデータを地図上に重ね合わせ、物件周辺の情報を1枚のマップにまとめることができます

さらにQGISの分析機能を使えば、「バス停から半径200mの範囲」といった円(バッファ)を描いたり、物件から施設までの距離を計測したりすることも簡単です。「駅徒歩◯分」だけでは伝わらない、物件の立地の魅力を視覚的に示すことができます。

学校区・駅・バス停を重ね合わせた物件周辺マップの例。駅から500m(青)、バス停から200m(赤)の範囲も合わせて表示することで、徒歩圏の施設をひと目で確認できる
学校区・駅・バス停を重ね合わせた物件周辺マップの例。駅から500m(青)、バス停から200m(赤)の範囲も合わせて表示することで、徒歩圏の施設をひと目で確認できる

ユースケース2: 地価・取引価格情報の可視化

想定シーン: 査定や仕入れ判断のために、エリアの価格相場を地図で俯瞰したい

国土交通省が2024年から運用している「不動産情報ライブラリ」では、地価公示や不動産取引価格などの情報がAPIとして公開されており、QGISから直接読み込むことができます。

地価公示のポイントデータを地図上に表示すれば、対象エリアの価格水準をひと目で俯瞰できます。価格帯に応じてポイントを色分けすれば、「駅の東側と西側で価格帯が異なる」「幹線道路沿いだけ商業地価格になっている」といったエリアの傾向も直感的に読み取れます。

地価公示のポイントを価格帯で色分け表示。地点をクリックすると、画面右側で価格や所在地などの詳細情報を確認できる
地価公示のポイントを価格帯で色分け表示。地点をクリックすると、画面右側で価格や所在地などの詳細情報を確認できる

ここに自社の成約データや査定対象物件の位置を重ねれば、根拠のある査定資料やオーナー向けの提案資料づくりにもつながります。公的データに基づいた地図は説得力があり、顧客への説明ツールとしても効果的です。

また、エリアごとに地価を集計することも簡単です。たとえば次の記事では、東京都の市区町村単位で地価公示の価格を集計する例を紹介しています。

ユースケース3: 災害リスク情報の確認

想定シーン: 重要事項説明に向けて、物件の災害リスクをまとめて確認したい

2020年の宅地建物取引業法施行規則の改正により、水害ハザードマップにおける物件の所在地の説明が重要事項説明の対象になりました。災害リスクの確認は、いまや不動産実務に欠かせない業務のひとつです。

国土数値情報では、洪水浸水想定区域や土砂災害警戒区域などの防災関連データが公開されています。QGISでこれらのデータを読み込めば、取り扱う複数の物件と災害リスク区域との位置関係を、1つの画面でまとめて確認できます。

洪水浸水想定区域と管理物件の位置関係をまとめて確認できる(物件はダミーデータ)
洪水浸水想定区域と管理物件の位置関係をまとめて確認できる(物件はダミーデータ)

ハザードマップポータルサイトなどを利用すれば、マップ上で災害リスクを確認できます。ただし、対象物件ごとに個別に開き、1件ずつ確認する必要があるため手間がかかります。GISなら、管理物件全体を俯瞰しながらまとめてチェックできるのが利点です。また、物件リスト(CSV等)を読み込んで一括でプロットすれば、「浸水想定区域内にある物件はどれか」を一括で抽出することもできます

また、作成したマップは画像や「印刷レイアウト機能」を使うことで下記のような地図としてPDFとして出力できるので、資料としてそのまま活用できます。

印刷レイアウト機能を使うことで、凡例や方位記号などを追加した地図を作成・共有できる
印刷レイアウト機能を使うことで、凡例や方位記号などを追加した地図を作成・共有できる
重要事項説明にあたっては、必ず市町村が公表する最新のハザードマップ等の原典をご確認ください。QGIS上での確認は、あくまで事前調査としての活用がおすすめです。

ユースケース4: 用途地域など都市計画情報の確認

想定シーン: 物件調査や重要事項説明に向けて、対象地の用途地域や建築規制を確認したい

物件がどの用途地域にあるかは、建てられる建物の種類や建ぺい率・容積率を左右する、物件調査の基本情報です。従来は自治体ごとの都市計画図やWebサイトを個別に開いて確認する必要がありました。

国土数値情報では、用途地域のほか、区域区分(市街化区域・市街化調整区域)、都市地域、立地適正化計画の誘導区域など、都市計画の区域区分に関するデータが数多く公開されています。QGISで用途地域データを読み込めば、用途地域を色分けした地図の上で物件の位置を確認でき、自治体をまたいだエリアでも一括でチェックできます。

用途地域ポリゴンを色分け表示し、物件ポイント(ダミー)を重ねた画面
用途地域ポリゴンを色分け表示し、物件ポイント(ダミー)を重ねた画面
国土数値情報の都市計画関連データは、最新の都市計画決定が反映されていない場合があります。重要事項説明にあたっては、必ず自治体が公表する都市計画図等の原典をご確認ください。

ユースケース5: 登記所備付地図データで地番を確認

想定シーン: 取引対象の土地の地番や筆界を、地図上で確認したい

法務省の登記所備付地図データ(公図データ)は、G空間情報センターで無償公開されています。

地番や筆界を背景地図や航空写真と重ねて確認できるため、取引対象となる土地の特定や、権利関係の整理の参考資料として活用できます。前述の周辺情報マップや災害リスク情報と組み合わせれば、物件調査に必要な情報を1つのQGISプロジェクトに集約することも可能です

登記所備付地図データを背景地図に重ねて表示。地番や筆界を地図上で確認できる
登記所備付地図データを背景地図に重ねて表示。地番や筆界を地図上で確認できる

QGISでの登記所備付地図データの読み込み方法は、こちらの記事で詳しく解説しています。

ユースケース6: 現地調査での情報収集

想定シーン: 物件の現地調査で、写真や現況メモを地図に紐づけて記録したい

物件調査では、机上の確認だけでなく、現地での状況確認が欠かせません。QGISのモバイル版アプリ「QField」を使えば、ここまでのユースケースで作成したQGISプロジェクトをスマートフォンやタブレットに持ち出し、現在地を確認しながら写真やメモを記録できます。

現地で入力したデータはそのままQGISに取り込めるため、「現場で紙にメモして、帰社後にPCへ転記する」という二度手間がなくなります。

QGISで作成した地図をスマホに持ち出すことで、現場で情報を記録できる
QGISで作成した地図をスマホに持ち出すことで、現場で情報を記録できる

QFieldの特徴やできることは、こちらの記事で詳しく解説しています。

おわりに

不動産業務におけるQGISの活用イメージ、いかがでしたか。

物件周辺マップの作成、価格相場の可視化、災害リスクの確認、用途地域の確認、地番の確認、どれも特別な開発やシステム投資は必要なく、無料のQGISと公開されているオープンデータだけで始められるものばかりです。

また、物件リストをGISデータとして整備しておけば、日々の物件管理や社内での情報共有の土台にもなります。まずは気になる物件の周辺データを地図に重ねてみるところから、ぜひ試してみてください。

QGIS LABでは、これからQGISを学びたい方に向けて初心者向けの記事を学習パッケージとして公開しています。あわせてご覧ください。

使用データ

この記事を書いた人
QGIS LAB編集部
QGIS LAB編集部

QGIS LABは、オープンソースのGISソフトウェア「QGIS」に関する総合情報メディアです。「位置から、価値へ。」をコンセプトに、位置情報で世界を拓くための知識と技術をお届けします。

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