QGISで地図に方位や凡例などを入れられる!「印刷レイアウト機能」を使ってみよう
この記事でわかること
- QGISでの印刷レイアウト作成手順
- レイアウトマネージャの使い方
- 地図の印刷方法やPDFへのエクスポート方法
こんな人におすすめ
- QGISで作成した地図を、凡例や縮尺などを入れた地図に書き出したい方
- QGISで作成した地図を印刷したりPDFにエクスポートしたい方
はじめに
印刷レイアウトとは、作成した地図を印刷やPDF、画像ファイルなどにエクスポートするための機能です。これにより、QGISで作成した地図を見栄え良くレイアウトし、報告書やプレゼンテーションに使用できる形式に整えて共有することができます。なお、地図としての基本要素である方位や縮尺が含まれていない場合、地図の信頼性が低下し、正確な情報伝達が難しくなるため注意が必要です。
この記事では、QGISの印刷レイアウトの作成方法から、PDFにエクスポートするまでの手順を詳しく解説します。
事前準備:地図の作成
印刷レイアウトの作成前に、QGISにレイヤを追加して地図を作成しましょう。
この記事では、国土数値情報の「ダム」データを使用して、総貯水量を示す属性(W01_010)をもとに「連続値による定義」で色塗りをしています。
新規印刷レイアウトの作成
地図が作成できたら、印刷レイアウトを作成していきます。
メニューバーの[プロジェクト]から[新規印刷レイアウト]を選択します。
印刷レイアウトのタイトルを入力する画面が表示されるので、作成する印刷レイアウトに適した名前を入力し、[OK]をクリックしましょう。
印刷レイアウトを作成する画面が表示されました。画面中央には、真っ白な用紙(レイアウト)が表示されています。
このレイアウトにさまざまなアイテムを追加して、出力用の図面を作成していきます。
印刷レイアウトの画面構成
印刷レイアウトの画面構成は、以下の図のようになっています。
画面中央にはレイアウトが配置されています。このレイアウトに対して、画面左側から追加したいアイテム(マップやタイトル、凡例など)を選択し、レイアウトに配置をしていきます。
画面右側の「配置済みアイテム一覧」には、追加したアイテムがリスト形式で表示されます。
「レイアウトやアイテムのプロパティ」からは追加したアイテムの各種設定を行うことができます。
印刷レイアウトの初期設定
用紙サイズの設定
印刷レイアウトの作成に入る前に、用紙サイズの設定を行いましょう。
印刷レイアウトはデフォルトでは、A4横で設定されています。これを変更したい場合は、レイアウト上で右クリックをして、[ページのプロパティ]を選択します。
すると、画面右下の「アイテムプロパティ」がページ設定をする画面に切り替わりました。
ここからレイアウトのサイズや方向、背景色などを変更することができるので、目的に応じて変更しましょう。
グリッド表示・スナップ機能をオンにしてアイテムの配置を綺麗に整える
レイアウトにアイテムを追加していきますが、その際グリッドを表示することで綺麗にアイテムを配置することができます。こちらの設定は必ずしも行う必要はないものなので、お好みで設定しましょう。
メニューバーの[ビュー]から[グリッドを表示]をクリックしましょう。
少しわかりづらいですが、レイアウト上に点のグリッドが表示されました。
続いて「スナップ」の設定です。
メニューバーの[ビュー]から[グリッドにスナップ]をクリックしましょう。
この設定をONにしておくことで、グリッドにスナップしてアイテムの配置をすることができるので、アイテムを整理して配置することができます。
アイテムの配置時に、グリッド近くにマウスカーソルを移動させると、赤の「×」マークが表示されます。この状態でドラッグ&ドロップすると、この位置にスナップしてアイテムが配置されます。
グリッドの設定は、画面右下の「レイアウトプロパティ」より変更することができます。デフォルトでは10mm間隔で表示され、スナップ許容量が5pxとなっています。
グリッドの表示間隔を調整したい場合は、「グリッド間隔」の数値を調整しましょう。また、「スナップ許容量」については、値を大きくすると、よりグリッドにスナップが効きやすくなるので、ご自身の作業がしやすいように適宜調整しましょう。
地図アイテムの追加と調整
では、ここから印刷レイアウトにアイテムを追加していきます。
印刷レイアウト上では、地図の描画範囲や凡例、方位記号などのことをアイテムといいます。
地図アイテムの追加
印刷レイアウトに初めてアイテムを追加する場合は、レイアウト作成時の基準となる「地図」を追加するとよいでしょう。
左側のツールバーから[地図を追加]アイコンを選択します。
マウスカーソルが「+」に切り替わるので、レイアウト上でドラッグ&ドロップして「地図」の範囲を描画します。
ドラッグ&ドロップすると、レイアウト上に「地図」が追加されます。なお、使用しているデータによっては、描画に時間がかかる場合があります。
地図の表示範囲の調整
「地図」で表示されている範囲は、マップキャンバスで表示している範囲が基準となります。そのため、目的の場所とは違う場所が表示されており、表示範囲を調整したいことがあるでしょう。
表示範囲を変更するには、ツールバーで[アイテムのコンテンツを移動]を選びます。
レイアウト上で、ドラッグ&ドロップをすると表示範囲の調整、マウスホイールを前後に回転させると縮尺を変更できます。
今回は、北海道の中からダムのポイントがある場所を中心として表示するように調整しました。
縮尺の調整
[アイテムのコンテンツを移動]からマウスホイールで縮尺を調整することができましたが、数値を直接入力して細かく調整することも可能です。
まずは、ツールバーから[アイテムの選択/移動]が押下された状態にしましょう。押下状態になっていることで、レイアウト上のアイテムを選択することができます。
レイアウト上から「地図」をクリックして選択状態にします。選択状態になると、アイテムが青色の枠線で表示されます。
続いて[アイテムプロパティ]を選択しましょう。
「メインプロパティ」に「縮尺」という項目があるため、ここから直接数値を編集することでレイアウトの縮尺を調整することができます。
ここでは、キリが良くなるように3500000
としてみました。
フレームの追加
最後に、「地図」にフレーム(枠線)を追加してみます。
「地図」を選択した状態で「アイテムプロパティ」内の[フレーム]にチェックを入れます。[フレーム]の[▼]を開くことで、色や太さなどを調整することができます。
フレームを追加することで、アイテムの境界がわかりやすくなるので、お好みで追加するとよいでしょう。
ラベルで地図タイトルの追加
「地図」の追加と調整が終わったので、続いてこの図面にタイトルなどのテキストを入力する「ラベル」を追加していきます。
ツールバーより[ラベルを追加]をクリックします。
先ほど「地図」を追加した時と同様の手順で、ドラッグ&ドロップで「ラベル」を追加します。
今回は「地図」の左上に配置してみました。
ラベルに表示するテキストやサイズなどは、「アイテムプロパティ」より変更することができます。ラベルに表示するテキストを変更する場合は、「メインプロパティ」下部のテキスト入力欄にお好みのタイトルを入力します。ここでは「北海道:ダム貯水量マップ」としました。
続いてラベルの表示形式を変更したい場合は、「外観」より変更することができます。フォントについては、外観のすぐ下のフォントと表示されているプルダウンから変更が可能です。ここでは、「フォントサイズ」を[20]、「水平方向配置」と「垂直方向配置」をそれぞれ[中央]に設定しました。
「地図」と同様の手順で、フレームを追加しておきましょう。
アイテムサイズの変更方法
フォントのサイズを変更した関係で、下記の図のように「ラベル」アイテムに文字が収まらなくなったような場合は、フォントサイズや「ラベル」アイテムのサイズを適宜調整しましょう。
アイテムのサイズを変更する場合は、アイテムを選択した状態で、アイテムの隅にカーソルを当てて、ドラッグ&ドロップすることで変更することができます。
最終的に以下のように調整しました。
凡例の追加
「凡例」とは、地図で使用されている地物の色やシンボルの意味を説明するための一覧表です。地図に表示されている要素が何を表しているかの情報を提供することができます。
「凡例」を追加するには、ツールバーより[凡例を追加]をクリックします。
これまでと同様の手順で、「凡例」をお好みの場所に追加しましょう。「凡例」にもフレームをつけておきます。
凡例から項目を削除する方法
「凡例」は、初期状態ではマップキャンバスに追加している全てのレイヤが追加されています。今回は、ダムレイヤの色がどの数値の範囲を示しているのかを「凡例」に表示したいので、表示項目を調整します。
「凡例」が選択されている状態で、「アイテムプロパティ」の「凡例アイテム」から[自動更新]のチェックを外します。続いて、リストから「凡例」には追加したくないレイヤを選択します。最後に、[−]ボタンをクリックすることで、選択したレイヤが「凡例」から削除されます。
凡例の表示名を変更する方法
「凡例」アイテムに表示されている名称を変更したい場合は、変更したいレイヤを選択してから[アイテムプロパティの編集]ボタンをクリックします。
「ラベル」欄のテキストを変更することで、凡例に表示される名称も変更されます。
上記の変更を反映したらサイズや位置を調整しましょう。
スケールバーの追加
「スケールバー」とは、地図上の距離と実際の距離の関係を示すための目盛り付きのバーのことです。「スケールバー」を追加することで、地図に表示されている距離が現実世界でどのくらいの距離なのかを視覚的に理解することができます。
「スケールバー」を追加するには、ツールバーより[スケールバーを追加]をクリックします。
「スケールバー」をお好みの場所に追加しましょう。
スケールバーのスタイルの変更
「スケールバー」も「アイテムプロパティ」から表示設定を変更することができます。
「メインプロパティ」の「スタイル」からは、「スケールバー」のスタイルを変更することができます。
デフォルトでは「シングルボックス」に設定されていますが、上向きチックや中央チック、数値での表現などさまざまなスタイルが用意されています。
スケールバーのメモリを変更する方法
また、「スケールバー」の「単位」や「メモリ(セグメント)数」を変更することも可能です。
今回は、「固定幅」の単位を100km単位に変更しました。
方位記号の追加
続いて「方位記号」を追加します。
「方位記号」を追加するには、ツールバーより[方位記号を追加]をクリックします。
「方位記号」をお好みの場所に追加しましょう。
方位記号のスタイルの変更
「方位記号」も、他のアイテムと同様に「アイテムプロパティ」からスタイルを変更することができます。
「SVGブラウザ」からは、「方位記号」のシンボルを変更できます。「SVGグループ」より「arrows」フォルダを選択し、右のSVGイメージよりお好みの「方位記号」を選択しましょう。
また、さらに下にスクロールすると、「SVGパラメータ」という設定項目があります。こちらから色を変更することで、「方位記号」の色を変更することが可能です。
上記の設定を反映し、最終的に以下のようになりました。
印刷レイアウトをPDFに出力
ここまで、さまざまなアイテムを追加して、最終的に以下のようなレイアウトを作成することができました。
最後のステップとして、作成したレイアウトをPDFに出力してみます。
メニューバーの[レイアウト]より[PDFにエクスポート]を選択します。
「PDFにエクスポート」画面が表示されるため、ファイル名を適宜編集し[保存]ボタンをクリックしましょう。
「PDF出力のオプション」の画面が表示されますが、オプションなどは変更せず[保存]ボタンをクリックしましょう。
出力されたPDFを確認してみると、作成したレイアウトが出力できていることが確認できました。
なお、PDFの他にも画像としてエクスポートしたり、プリンターで直接印刷したりすることも可能です。
印刷レイアウトファイルの保存
QGISの印刷レイアウトを作成し終わったら、印刷レイアウトを保存しておきましょう。
印刷レイアウトファイルはプロジェクトファイルに保存されるため、プロジェクトを保存すれば印刷レイアウトも保存されます。
ツールバーの[プロジェクト保存]をクリックして、プロジェクトを保存しましょう。
レイアウトマネージャからレイアウトを開く
プロジェクトに保存したレイアウトを再度開きたい場合は、「レイアウトマネージャ」から開くことが可能です。QGISのメイン画面のメニューバーから[プロジェクト]→[レイアウトマネージャ]をクリックします。
「レイアウトマネージャ」が開いたら、レイアウト作成時につけたタイトルがリストで表示されているため、目的のレイアウトをダブルクリックしましょう。
レイアウトを保存した時の状態で表示することができました。
おわりに
QGISの印刷レイアウト機能を活用することで、地図を見栄え良く整えて、印刷したりPDFに出力することができます。
今回の記事では、すべてのアイテムについては紹介できませんでしたが、その他にも属性テーブルや画像などさまざまなアイテムを追加できます。
印刷レイアウトを使いこなすことで、報告書や現場調査用の地図を効率的に作成できるでしょう。