
QGISのデータを現場に持ちだそう!QFieldの特徴やできることをわかりやすく解説
この記事でわかること
- モバイルGISアプリ「QField」の概要
- QGISとの連携方法(QField Sync、QFieldCloud)
- QFieldの具体的な活用事例
こんな人におすすめ
- QGISで作成したデータを作業現場でも活用したい方
- モバイル端末を用いて、現地調査を効率化したい方
はじめに
オープンソースGISソフトウェアの代表格である「QGIS」は、多くのユーザーに利用されています。しかし、フィールドワークの現場で地図データを手軽に記録・編集できるツールの選択肢は、これまで限られていました。
そこで登場したのが「QField」というアプリです。スマートフォンやタブレット上でQGISの機能を再現し、現場での地図データの入力や編集を直感的に行うことができます。
この記事では、QFieldの主な機能や特徴、QGISとの連携方法について詳しくご紹介します。

QFieldとは
QFieldは、iOS、Android、Windowsで利用可能なモバイルアプリケーションです。オープンソースとして開発されており、誰でも無料で使えるのが大きな魅力です。 QGISと同じ地図表示の仕組みを採用しているため、見慣れた表示で作業を行うことができます。
また、オフライン環境でも地理空間データの収集・表示・編集が可能で、電波の届かない現場でも活用することができます。 QGISとの連携機能により、プロジェクトの準備からフィールドでのデータ収集、分析まで、一連のワークフローを効率化できます。

QFieldの特徴・できること
タブレットやスマートフォンで「QGISに近い」操作感
QFieldは、QGISで作成した地図の設定やスタイルをそのままモバイル端末で利用できます。さらに、電波圏外でもオフラインでのデータ入力・編集が可能なため、場所を選ばず作業ができます。また、写真、音声、メモなどを現場で地図データに直接紐付けることができる機能により、現地調査の詳細な記録作業に最適なツールとなっています。

QGISとのスムーズな連携
QFieldの最大の特徴は、QGISとシームレスに連携できることです。この連携を実現するのが「QField Sync」というプラグインです。
QField Syncは、QGISのプロジェクトをQField形式に変換し、モバイル端末で利用できるパッケージを作成できるプラグインです。作成したパッケージをモバイル端末に転送することで、QField上でプロジェクトを活用できるようになります。また、QFieldで編集したデータをQGISに取り込むことも可能です。

QFieldとQGISは以下のような流れで使用します。
- まず、QGIS上でプロジェクトを構築します。必要なデータの追加、レイヤの整理、スタイルの調整など、基本的な設定をここで行います。
- 次に、QField Syncを使って作成したプロジェクトからパッケージを作成し、現地で使用するスマートフォンやタブレットなどのモバイル端末に転送します。これにより、QGISと同じ環境でデータの収集・編集が可能になります。
- 現場作業が終わったら、QFieldで収集・編集したデータを含むパッケージをQGISに取り込みます。
このように、QGISでプロジェクトを管理しながら、QFieldで現場のデータを収集・編集を行うことで、効率的なワークフローが実現できます。
QFieldCloudでデータを一元管理・共有
「QFieldCloud」は、作業現場で編集したデータをまとめて管理できるサービスです。QField上でプロジェクトをクラウドにアップロードしておけば、他の利用者はクラウドから最新情報をダウンロードして利用できます。
QGISとQField間のデータ更新は、パッケージファイルを手動で転送する必要がありますが、QFieldCloudを利用すれば、データの同期・管理がより簡単になります。
プロジェクトを定期的に同期するだけで、チーム全員が常に最新のデータを利用できるので、離れた場所にいるメンバー同士でも効率的な共同作業が可能です。

QField SyncはQFieldCloudにも対応しており、データのアップロードやダウンロードを簡単に行うことができます。これにより、現場とのデータのやり取りがさらにスムーズになります。

なお、QFieldは無料で利用できますが、QFieldCloudは100MB以上のデータ容量や複数ユーザーでの共有機能を使用する場合、有料プランへの加入が必要です。詳しくは、QFieldCloudの公式ホームページをご覧ください。
QFieldの活用事例
QFieldは、以下のような用途で広く活用されています。
林業での活用
林野庁は、国有林における生産・造林事業の効率化を目指し、現場での情報収集と管理にQFieldを導入しています。従来の森林調査や事業計画の現場確認作業では、紙地図や手書きの記録に多くの時間と労力がかかっていました。しかし、QFieldを導入することでこれらの課題が解決され、より迅速かつ正確な森林管理が実現しつつあります。
具体的には、森林管理の担当者は、QGISで作成した事業計画等のデータをスマートフォンやタブレットなどのモバイル端末に入れ、通信圏外の現場でも利用しています。これにより、現地調査時のナビゲーションが可能となり、広大な森林内での移動や目的地の特定がスムーズになります。
また、間伐区域や作業道の形状修正部分をその場で計測して記録できます。たとえば、計画された作業道のルートを実際に歩きながら、QFieldのトラッキング機能を用いてその経路を効率的に計測・記録し、そのデータをGIS上で表示することができます。

都市計画での活用
ドイツにおける都市の再開発事業において、都市計画の担当者が現場で都市の状況を文書化する初期段階でQFieldが使われています。
具体的には、担当者は、建物の構造と質、住宅と産業の空き家率、道路状況、その他多くの都市の質と構造の欠陥に関するデータを収集する必要があります。従来、これらのデータはアナログ地図に手作業で記録されていましたが、QFieldを導入することで作業の効率化につながりました。

考古学での活用
考古学の発掘現場では、いまだに紙での記録が主流となっています。しかし、QFieldを導入することで、作業効率を大幅に向上させることが可能です。
紙による記録にはいくつかの課題があります。たとえば、現場で記録した内容を後からデジタル化する手間がかかるほか、紙資料の保管スペースの確保も必要です。また、発掘現場は作業の進行状況や天候の影響を受けて変化しやすく、遺構の正確な位置を把握・記録するのが難しいという問題もあります。
さらに、発掘作業が終了した後、収集した情報を集約・整理する作業にも多くの時間と労力がかかります。QFieldを活用すれば、現地でのリアルタイムなデジタル記録が可能となり、こうした課題を一挙に解決できます。

趣味・レジャーでの活用
桜のスポット
春といえば桜の季節ですが、桜の観賞スポットを確認できる情報は意外と少ないのが現状です。QFieldを活用することで、現地で桜の位置や開花状況を調査し、地元の方や観光客が手軽に各地の桜スポットを把握できるような地図を作成することが可能です。

自動販売機の位置データ収集
日本の都市部には数多くの自動販売機が数多く設置されていますが、地方では設置数が少なくなります。真夏のランニングやサイクリング中に、近くに自動販売機やお店が見つからず困った経験をされた方は少なくないでしょう。
QFieldを活用することで、自動販売機の位置情報を収集し、ランナーやサイクリスト、ハイカーなど、多くの方々が活用できるようデータを共有してみましょう。トイレや店舗の位置情報も併せて共有することで、より便利な地図を作成することができます。

おわりに
QFieldは、QGISと同じように操作できるモバイルアプリで、現地での位置情報の収集や編集を無料で簡単に行うことができます。QGISとスムーズに連携できるため、現場で取得したデータをデスクトップでの解析・管理作業に効率的に活用できる点が大きな特徴です。
より詳しい事例をお探しの方は、QFieldのホームページに掲載されているケーススタディもあわせてご覧ください。
今後のプロジェクトにおいて、ぜひQFieldを活用してみてください。