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QGISの過去バージョンをインストールする方法

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この記事でわかること


  • QGISの過去バージョンが必要になる具体的なケース
  • WindowsとMacで過去バージョンのQGISをインストールする手順
  • 過去バージョンを使用する際の注意点

こんな人におすすめ


  • 最新版のQGISと互換性のないプラグインを使用したい方
  • プロジェクトの要件上、特定のQGISバージョンを使用する必要がある方
  • QGIS 3.30以降で削除されたSAGAツールを活用したい方

はじめに

QGISは常に進化を続けており、定期的なアップデートによって機能が継続的に向上しています。ただし、実際の業務では最新版を使用できない場面も存在します。特定のプロジェクトで使用しているプラグインが最新版に対応していない場合や、既存のワークフローとの互換性を保つ必要がある場合には、過去バージョンのQGISを継続使用することが求められます。

この記事では、QGISの過去バージョンが必要となるケースとその具体的なインストール手順について紹介します。

QGISの過去バージョンが必要となるケース

プラグインとの互換性

一部のプラグインは特定のQGISバージョンでのみ動作保証されています。そのため、QGISを最新バージョンにアップデートすると、プラグインにバグが発生することもあります。

このような場合、そのプラグインが正常に動作する過去バージョンのQGISを使用するのが最も確実な解決策です。

なお、プラグインの品質向上のため、不具合は開発者に報告しましょう。プラグイン管理画面で対象のプラグインを選択し、[バグトラッカー]をクリックすることで報告できます。

プラグイン管理画面から[バグトラッカー]をクリック
プラグイン管理画面から[バグトラッカー]をクリック

SAGAツールの使用

QGISには、SAGA GIS(System for Automated Geoscientific Analyses)というオープンソースのGISソフトウェアが標準で同梱されていました。SAGA GISは地形解析や水文解析に特化した豊富なツールを提供しており、多くのユーザーに活用されてきました。

しかしながら、QGISとSAGA GISのバージョン間の互換性の問題により、QGIS 3.30以降はSAGAツールがプロセシングツールボックスから削除されています

SAGAプロセッシングツール(QGISバージョン3.28まで利用可能)
SAGAプロセッシングツール(QGISバージョン3.28まで利用可能)

Windowsでの過去バージョンのインストール方法

インストーラーをダウンロード

QGISのダウンロードページでは、最新版とLTR版(長期安定版)のみが表示されています。過去バージョンを入手するには、メニューの[Archive]をクリックします。

QGISのダウンロードページから[Archive]をクリック
QGISのダウンロードページから[Archive]をクリック

その後[QGIS.org hosted downloads]を選択することで、過去バージョンのQGISインストーラーのダウンロードページにアクセスできます。

Archiveページから[QGIS.org hosted downloads]をクリック
Archiveページから[QGIS.org hosted downloads]をクリック

QGISインストーラーの一覧が表示されます。ページの上部に「windows」フォルダがあるので、そちらに移動しましょう。

QGISインストーラーの一覧から「windows」フォルダに移動
QGISインストーラーの一覧から「windows」フォルダに移動

「windows」フォルダには、QGIS 0.1から最新バージョンまで、すべてのバージョンのインストーラーが格納されています。

Windowsに対応したインストーラー
Windowsに対応したインストーラー

Windowsに対応したインストーラーの拡張子は.msiまたは.exeです。希望するバージョン(この例では3.28.15)をクリックすると、インストーラーのダウンロードが開始されます。

QGIS 3.28.15をダウンロード
QGIS 3.28.15をダウンロード

インストールと起動

ダウンロードが完了したら、次はインストール作業に進みます。QGISの大きな利点として、1台のPC上に複数のバージョンを並行してインストールできる点が挙げられます

これにより、現在メインで使用しているQGISバージョンをアンインストールすることなく、過去バージョンや最新版を同時に利用することが可能です。プロジェクトやプラグインに応じてバージョンを使い分けられるため、業務の継続性を保ちながら新機能も試すことができます。

複数バージョンのインストールについて、詳細はこちらの記事をご参照ください。

過去バージョンのQGISをインストールする手順は、基本的に最新版と同じ流れで行うことができます。以下の記事で紹介している標準的なQGISインストール方法と同様の手順で進められます。

インストールが完了すると、スタートメニューや検索バーで「QGIS」と入力することで、QGISの過去バージョンがインストールされていることを確認できます。

QGISの過去バージョンがインストールされている
QGISの過去バージョンがインストールされている

Macでの過去バージョンのインストール方法

インストーラーのダウンロード

QGISのダウンロードページでは、最新版とLTR版(長期安定版)のみが表示されています。過去バージョンを入手するには、メニューの[Archive]をクリックします。

QGISのダウンロードページから[Archive]をクリック
QGISのダウンロードページから[Archive]をクリック

その後[QGIS.org hosted downloads]を選択することで、過去バージョンのQGISインストーラーのダウンロードページにアクセスできます。

Archiveページから[QGIS.org hosted downloads]をクリック
Archiveページから[QGIS.org hosted downloads]をクリック

QGISインストーラーの一覧が表示されます。ページの上部に「macos」フォルダがあるので、そちらに移動しましょう。

QGISインストーラーの一覧から「macos」フォルダに移動
QGISインストーラーの一覧から「macos」フォルダに移動

「macos」フォルダ内にはさらにいくつかのフォルダがあります。この例では3.28.15バージョンのポイントリリース(PR)をダウンロードするため、「pr」フォルダに移動します。

「macos」フォルダから「pr」に移動
「macos」フォルダから「pr」に移動

そこで3.28.3バージョンの.dmg形式のインストーラーファイルを見つけてダウンロードできます。

「pr」フォルダから「QGIS 3.28.3」をダウンロード
「pr」フォルダから「QGIS 3.28.3」をダウンロード

インストールと起動

ダウンロードが完了したら、次はインストール作業に進みます。QGISの大きな利点として、1台のPC上に複数のバージョンを並行してインストールできる点が挙げられます

これにより、現在メインで使用しているQGISバージョンをアンインストールすることなく、過去バージョンや最新版を同時に利用することが可能です。プロジェクトやプラグインに応じてバージョンを使い分けられるため、業務の継続性を保ちながら新機能も試すことができます。

複数バージョンのインストールについて、詳細はこちらの記事をご参照ください。

過去バージョンのQGISをインストールする手順は、基本的に最新版と同じ流れで行うことができます。以下の記事で紹介している標準的なQGISインストール方法と同様の手順で進められます。

インストールが完了したら、Finderからアプリケーションフォルダを開き、「QGIS.app」が表示されていることでQGISの過去バージョンがインストールされたことを確認できます。

QGISの過去バージョンがインストールされている
QGISの過去バージョンがインストールされている

Macで過去バージョンをインストールする際の注意事項

インストーラーのダウンロードに関する注意点

Mac用インストーラーの構成はややわかりにくいので、以下の点に注意してください。QGISインストーラーのルートフォルダには.dmgファイルが直接置かれていません。Mac向けインストーラーにアクセスするには、「macOS」または「macos」フォルダを選択する必要があります。

QGISインストーラーの一覧から[macOS]か[macos]のフォルダ
QGISインストーラーの一覧から[macOS]か[macos]のフォルダ

「macOS」フォルダには、バージョン2.14からバージョン3.8までのインストーラーが格納されています。

「macOS」ディレクトリの中身
「macOS」ディレクトリの中身

「macos」フォルダには、バージョン3.20以降のインストーラーが格納されています。安定版(LTR)は「ltr」フォルダに、通常版は「pr」フォルダに整理されています。

「macOS」ディレクトリにある「ltr」と「pr」フォルダ
「macOS」ディレクトリにある「ltr」と「pr」フォルダ

つまり、バージョン3.10〜3.18および2.14より前のバージョンについては、Mac用インストーラーは提供されていません

インストールの注意点

Macでは、アプリケーション名にバージョン番号が記載されません。例えば、LTR版(長期安定版)の場合、アプリケーションは「QGIS-LTR.app」となります。そのため、既存のバージョンが存在する場合、「現在コピー中の古い項目で置き換えますか?」という警告メッセージが表示されます。最新のQGISバージョンを残すには「両方とも残す」ボタンをクリックしてください。

既存の安定版を上書きしないよう「両方とも残す」ボタンをクリック
既存の安定版を上書きしないよう「両方とも残す」ボタンをクリック

インストールが完了すると、過去バージョンはアプリケーションフォルダに「QGIS-LTR 2.app」として表示されます。

過去バージョンが「QGIS-LTR 2.app」で表示される
過去バージョンが「QGIS-LTR 2.app」で表示される

混乱を避けるため、アプリケーション名を「QGIS-LTR 3.xx.app」などに変更しておくことをお勧めします。

過去バージョンを使用する際の注意事項

プラグインとの互換性

過去バージョンをインストールすると、そのバージョンと互換性のないプラグインは機能しなくなります。これらのプラグインはプラグイン管理画面で赤色表示されます。

互換性のないプラグインは赤色で表示される
互換性のないプラグインは赤色で表示される

OSとの互換性

過去バージョンは現在のOSと互換性がない場合があります。たとえば、QGIS 2.14はWindows 8の時代にリリースされましたが、最新のWindows(記事執筆時点でWindows 11)での動作は公式に確認されていません。そのため、予期せぬ問題が発生する可能性があるので、使用時には注意が必要です。

おわりに

この記事では、QGISの過去バージョンをインストールする方法について解説しました。QGISのダウンロードアーカイブページから必要なバージョンを選択し、通常通りインストールするだけで、簡単に過去バージョンを利用できます。

QGISは複数バージョンの並行インストールに対応しているため、現在の環境を維持しながら必要に応じて過去バージョンを活用できます。プロジェクトの要件に合わせて適切なバージョンを選択し、効率的なGIS作業を進めましょう。

この記事を書いた人
QGIS LAB編集部
QGIS LAB編集部

QGIS LABは、オープンソースのGISソフトウェア「QGIS」に関する総合情報メディアです。「位置から、価値へ。」をコンセプトに、位置情報で世界を拓くための知識と技術をお届けします。

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