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QGIS 3.44新機能 〜QGIS 3シリーズの最終バージョン〜

投稿日: 最終更新日:
この記事はQGIS 3.44を使用しています。 現在のLTR(3.40)では利用できません。

この記事でわかること


  • QGIS 3.44の新機能
  • シンボロジやラベル機能の新しい設定方法
  • 地球儀を3Dで可視化する方法

こんな人におすすめ


  • QGISの最新機能に興味のある方
  • 地図のデザインに興味がある方
  • 地図を地球儀のように3D表示したい方

はじめに

2025年6月20日にバージョン3.44「Solothurn」がリリースされました。

QGIS 3.44は、QGIS 3シリーズの最終バージョンとしてリリースです。このリリースには、2025年10月に予定されているQGIS 4.0のQt6フレームワークへの移行準備とともに、「3D地球ビュー」など新機能の追加や既存機能の改善が含まれています。

この記事では、バージョン3.44のチェンジログから、いくつかの新機能をご紹介していきます。

3D可視化

3D地球ビュー

QGISで世界地図を地球儀のように3D表示できるようになりました。3D Tilesと地図データを重ねて表示することもできます。

この新機能により、QGISの3D表示機能が大きく進歩しました。

3D地球ビュー
3D地球ビュー

3Dマップビューでのクロスセクションツール

3Dマップビューで断面図を作成するための新しいツールが追加されました。3Dウィンドウでこのツールを選択し、2Dマップキャンバス上で断面を描画します。

3Dマップビューでのクロスセクションツール(オープンナガサキの点群データ(長崎県)を加工して作成)
3Dマップビューでのクロスセクションツール(オープンナガサキの点群データ(長崎県)を加工して作成)

レイヤスタイリング

未使用カテゴリの削除オプション

カテゴリ値による定義に、使用されていないカテゴリを削除する新しいオプションが追加されました。このオプションを使うと、属性フィールドに一致しないカテゴリを自動的に検出して削除できます。

この機能は、多数のカテゴリスタイルを持つデータの一部だけを使用する場合に特に便利です。

カテゴリ値による定義に[未使用だけ削除]オプション
カテゴリ値による定義に[未使用だけ削除]オプション

ラベル位置の管理オプション

ベクタレイヤのラベルに、2つのオプションが追加されました。

ラベルの周辺余白の設定

この機能により、ラベルの周辺に余白を設定でき、レイヤのラベルがその余白の範囲内に配置されることを防ぐことができます

例えば、密集した都市部でラベルを見やすいように表示したいときなどに便利です。

「ラベルの周辺余白」の設定
「ラベルの周辺余白」の設定
「ラベルの周辺余白」の設定なし(左)と設定あり(右)(©︎OpenStreetMap contributors)
「ラベルの周辺余白」の設定なし(左)と設定あり(右)(©︎OpenStreetMap contributors)

重複ラベルの防止

このオプションを使用すると、複数のレイヤ間で同じテキストのラベルが最小距離以内に存在する場合、重複するラベルを自動的に削除します

たとえば、道路データの各地物に道路名のラベルが付けられている場合、ラベルの密度が高すぎることがあります。このオプションを使用することで、適切な間隔でラベルが配置され、地図の可読性が向上します。

「ラベルの重複禁止」オプション
「ラベルの重複禁止」オプション
「ラベルの重複禁止」オプションの設定なし(左)と設定あり(右)(©︎OpenStreetMap contributors)
「ラベルの重複禁止」オプションの設定なし(左)と設定あり(右)(©︎OpenStreetMap contributors)

データ管理

データベースへのレイヤインポート時のフィルターオプション

レイヤをデータベースのテーブルとしてインポートする際に、地物を範囲や式でフィルタリングできるオプションが追加されました。

これにより、インポート前にデータをフィルタリングする手間が省け、作業効率が向上します。

データベースへの「ベクタレイヤをインポート」画面のフィルターオプション
データベースへの「ベクタレイヤをインポート」画面のフィルターオプション

クエリの保存機能が「SQLを実行」に追加

「SQLを実行」はQGIS 3.42バージョンで導入された新機能です。この機能が拡張され、ツールバーからクエリの保存、挿入、削除が可能になりました。保存先はプロジェクトまたはユーザープロファイルから選択できます。

頻繁に使用するクエリを保存しておくことで、その都度書き直す手間を省くことが便利です。

「SQLを実行」画面のクエリの保存機能
「SQLを実行」画面のクエリの保存機能

プロセッシングツール

バッチ処理での一時レイヤで出力

プロセシングツールのバッチ処理機能では、複数の処理を連続して実行できます。以前のバージョンでは出力データを一時レイヤとして設定できず、作業の妨げとなっていました。

このバージョンでは、バッチ処理で中間データを一時レイヤとして設定できるようになり、作業フローがより効率的になりました。

バッチ処理での一時レイヤで出力設定
バッチ処理での一時レイヤで出力設定

おわりに

QGISバージョン3.44「Solothurn」は、使いやすさを高める様々な機能を搭載していますが、特に注目すべきは、地図データを地球儀のように表示できる3D地球ビュー機能です。

今回ご紹介した機能以外にも多くの新機能が実装されています。その他の新機能については、チェンジログでご確認いただけます。

2018年のQGIS 3.0から3.44まで、QGISは安定性、性能、機能の面で飛躍的な進歩を遂げ、信頼性の高いオープンソースGISとして確固たる地位を確立しました。これからのQGIS 4.0の登場が待ち遠しいですね。

この記事を書いた人
QGIS LAB編集部
QGIS LAB編集部

QGIS LABは、オープンソースのGISソフトウェア「QGIS」に関する総合情報メディアです。「位置から、価値へ。」をコンセプトに、位置情報で世界を拓くための知識と技術をお届けします。

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