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秋といえば…GISの秋!FOSS4G Hokkaido参加レポート

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この記事でわかること


  • FOSS4G Hokkaido 2025のイベント概要
  • QGISに関するセッションやハンズオンの詳細

こんな人におすすめ


  • FOSS4Gイベントの雰囲気を知りたい方
  • QGISをテーマとした発表に興味がある方

はじめに

2025年9月26日・27日に、FOSS4G Hokkaido 2025が開催されました。

オープニングの様子
オープニングの様子

FOSS4Gとは「Free and Open Source Software for Geospatial(地理空間情報技術のオープンソースソフトウェア)」の略称で、このイベントはオープンソースの地理空間技術に関する知識や情報を共有するカンファレンスです。FOSS4Gのイベントは日本各地や世界各国で開催されており、FOSS4G Hokkaidoはその北海道版として「FOSS4G Hokkaido 実行委員会」によって運営されています。

この記事では、FOSS4G Hokkaido 2025の概要と、QGISをテーマとした発表をご紹介します。

Day1:ハンズオンデイ

1日目の「ハンズオンデイ」では、QGISをテーマとした講座として「GIS入門のためのQGIS初級講座」と「衛星画像で遊ぶQGIS中級講座」の2つが実施されました。入門レベルから中級レベルまで幅広い知識や技術を学べるのは、FOSS4Gイベントの大きな魅力のひとつです。

また、「Rによる地理空間データ分析」や「Supabaseを使ってWebGISを構築してみよう」といった講座も開講されました。

「衛生画像で遊ぶQGIS中級講座」の様子
「衛生画像で遊ぶQGIS中級講座」の様子

Day2:コアデイ

2日目の「コアデイ」では、FOSS4Gの活用事例や開発事例の紹介をはじめ、データフォーマットやデータベースシステムに関する発表など、幅広いテーマにわたって18のセッションが行われました。

ここでは、QGISに関するテーマをピックアップしてご紹介します。

QGIS講習を受けてみた

金澤さん・梅谷さんによる発表の様子
金澤さん・梅谷さんによる発表の様子

こちらは、北海道大学工学部の金澤さん・梅谷さんによる発表です。

お二人はQGISを全く操作したことがない状態から、基礎から順に4つの講座を受講した感想と、その学びを活かして地元の防災マップの作成にチャレンジした様子を紹介していました。

マップの作成にあたっては、必要なデータの収集の難しさや、数多くのプラグイン(拡張機能)の中から適切なものを選ぶ手間、地物の絞り込みに苦戦するといった課題がありましたが、最終的には地元自治体が公開しているものと同等のハザードマップを作成することができたとのことです。

QGISの可能性を最大限に引き出すSpatiaLite活用術!!

山﨑さんによる発表の様子
山﨑さんによる発表の様子

こちらは、株式会社MIERUNEの山﨑さんによる発表です。

SpatiaLiteはSQLiteを空間関数対応に拡張したもので、ファイルベースのデータベースとして手軽に利用できます。QGISではブラウザパネル、データベースマネージャ、Pythonコンソールから利用可能とのことです。

SpatiaLiteの空間クエリを活用することで、QGISのプロセシングやPyQGISを用いるよりも簡潔に処理を記述できるケースがあると紹介されました。さらに、テーブルの値を直接更新できるため、プロセシングツールのように新たなレイヤを生成することなく既存データを更新できる点も便利とのことでした。

北海道の農業団体におけるQGISの活用と展望

山本さんによる発表の様子
山本さんによる発表の様子

こちらは、ホクレン農業協同組合連合会の山本さんによる発表です。

GISのサービスはいくつもありますが、ツール選定やデータの集約・互換性に課題を感じ、リモートセンシングデータの解析などにQGISを個人的に活用しているという事例が紹介されました。公開されていた畑地の排水不良域推定法に関する報告書を参考に、自ら解析に取り組み、最終的には手順の一部をモデルデザイナーでモデル化することにも挑戦していました。

さらに、QGISを業務で活用する仲間を増やしたいとの思いから、社内で実施したQGIS講習会についても紹介があり、その内容や、QGISを活用した課題解決に向けたビジョンについても語られました。

PLATEAUデータをQGISで表示するフォーマット選手権

喜多さんによる発表の様子
喜多さんによる発表の様子

こちらは、エアロトヨタ株式会社の喜多さんによる発表です。

発表では、6つのフォーマットを対象に3D表示の速度を比較した結果が示されました。札幌市中心部の10km × 8kmの範囲を表示したところ、最も速く全域を描画できたのはGeoparquetでした。ただし、結果はマシンスペックなどの要因にも左右されるため、ファイルフォーマットだけの違いを純粋に比較したものではない点が補足されました。

PLATEAUの3D都市モデルをQGISで扱う方法についてはQGIS LAB by MIERUNEの記事でご紹介しています。興味のある方はご覧ください。

OpenStreetMap マッピングのすすめ

QGISを直接テーマとした発表ではありませんが、QGISでもXYZ Tiles形式として利用できるOpenStreetMap(OSM)のデータの編集に関するセッションも行われましたので、ここで紹介します。

北光社さんによる発表の様子
北光社さんによる発表の様子

こちらは、OpenStreetMap Japanの北光社さんによる発表です。

OSMの編集経験があまりない人や、OSMそのものを知らない人を対象に、道路や建物を題材に実演しながら編集の方法が解説されました。

コンビニエンスストアの登録に関しては、店舗で購入したレシートをもとに正式な住所表記を確認したり、店舗のガラスに掲示された文字から営業時間を確認したりと、丁寧にデータを整備する作業が紹介されました。こうした地道な取り組みの様子が伝わり、非常に印象的でした。

OpenStreetMapについて詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。

おわりに

FOSS4G Hokkaido 2025での発表の様子は、YouTubeで配信アーカイブを視聴できます。

FOSS4Gイベントでは、ハンズオンで知識や技術を習得でき、発表を通じて最新の話題に触れられ、さらに同じツールやライブラリを使う人々と交流できるなど、非常に魅力的な場となっています。全国各地で開催されているで、関心のある方はぜひ次回のイベントに参加してみてください。

国内のFOSS4Gイベントについては、一般社団法人OSGeo日本支部のページより確認できます。

この記事を書いた人
QGIS LAB編集部
QGIS LAB編集部

QGIS LABは、オープンソースのGISソフトウェア「QGIS」に関する総合情報メディアです。「位置から、価値へ。」をコンセプトに、位置情報で世界を拓くための知識と技術をお届けします。

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