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OpenStreetMapとは?QGISでも活用できるオープンデータプロジェクト

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この記事でわかること


  • OpenStreetMapとは何か
  • OpenStreetMapの特徴、使いどころ
  • QGISでOpenStreetMapを利用する方法

こんな人におすすめ


  • OpenStreetMapについて知りたい方
  • QGISでオープンデータを利用したい方

はじめに

「OpenStreetMap(OSM)」は、街中の自動販売機やゴミ箱からキャンプ場まで様々な種類の地物の情報をオープンデータとして提供しているプロジェクトです。

この記事では、OpenStreetMapの特徴と、QGISでの具体的な活用方法について解説します。

OpenStreetMapとは?

OpenStreetMapとは、誰でも自由に利用できる地図データを作成するプロジェクトです。2004年にイギリスで設立され、今では世界的なプロジェクトになっています。

OpenStreetMapのホームページ。( ©OpenStreetMap contributors)
OpenStreetMapのホームページ。( ©OpenStreetMap contributors

OpenStreetMapの特徴

OpenStreetMapの主な特徴として、オープンデータであること、誰でも編集に参加できること、幅広く利活用されていること、の3つが挙げられます。

オープンデータであること

1つ目はオープンデータであることです。

他の地図サービスでは、データ利用に料金がかかったり、使い方が制限されたりすることがあります。一方、OpenStreetMapは「Open Database License (ODbL)」というライセンスで提供されており、著作権表示さえ行えば、誰でも無料かつ自由に利用できます

なお、詳細な利用条件については、OpenStreetMapのサイト内「著作権とライセンス」を確認してください。

誰でも編集に参加できること

2つ目は誰でも編集に参加できることです。

OpenStreetMapではアカウントの作成さえ行えば、Wikipediaのように誰でも編集に参加することができます。ユーザーはスマートフォンのGPSなどから得た位置情報からお店や道路を追加したり、利用が許可されている航空画像を参考に、道路や建物を追加することができます。

また、正確ではない情報は後から修正することで、品質の改善を行うこともできます。さらに、個人だけでなく、企業や組織も編集に参加して品質の改善に取り組むこともあり、MetaやMicrosoftなどの大手企業がAIなどを使った品質の向上に取り組んでいます。

編集に興味のある方は、「OpenStreetMap Wiki:参加する」ページをご覧ください。

幅広い場所で利用されていること

3つ目は公共サービスからゲームまで幅広い場所で利用されていることです。

Humanitarian OSM Teamというプロジェクトでは、人道支援が必要な地域の地図データを世界中のユーザーが協力して編集する活動を行っています。例えば、自然災害が起こったとき、航空写真を参考に、道路や建物をOpenStreetMapへ追加・編集する、といった活動が行われています。過去には能登半島地震、熊本地震や東日本大震災で展開されました。こうして追加されたデータは現地で被害状況の把握や救助活動に役立てられます。

Humanitarian OSM Teamのホームページ
Humanitarian OSM Teamのホームページ

WheelmapもOpenStreetMapを利用しているプロジェクトの1つです。Wheelmapは車椅子を利用する人向けにその施設や道路が車椅子でアクセス可能かどうかを調べたり、対応状況を報告したりすることができるWebサイトです。

wheelmapのホームページ
wheelmapのホームページ

このように、人命救助、バリアフリーなどの公共・公益サービスの基盤として利用されているケースも多いですが、エンターテイメントでも利用されています。例えばPokémon Goを始めとして位置情報ゲームの一部で利用されています。

Pokémon Go - OpenStreetMap Wiki
Pokémon Go - OpenStreetMap Wiki

データモデル

OpenStreetMapはノード(node)ウェイ(way)リレーション(relation)という3つの要素で地図上のあらゆるものを表現します。ノードは点を、ウェイは道や境界線、建物の外郭などの線を、リレーションは複数のノードやウェイを組み合わせてつくられる複雑なものを、それぞれ表現します。

加えて、ノード、ウェイ、リレーションの3つの要素に、タグ(tag)と呼ばれるものを付与することで、「これは郵便ポストである」「これは国道である」「これは建物である」といった属性を表現することができます。

ノード(郵便ポスト)の例では、郵便ポストを示すタグの他、運営者(operator、operator:enなど)が誰であるかを示すタグなどが付けられています。

ノード(郵便ポスト)の例( ©OpenStreetMap contributors)
ノード(郵便ポスト)の例( ©OpenStreetMap contributors

ウェイ(国道の一部)の例では、国道を示すタグに加え、名前(name、 name:jaなど)、車線数(lane)や道の表面(surface)などのタグが付けられています。

ウェイ(国道の一部)の例(©OpenStreetMap contributors)
ウェイ(国道の一部)の例(©OpenStreetMap contributors

リレーション(歩道)の例では、複数のウェイを使いマルチポリゴンを表現しています。

リレーション(歩道)の例(©OpenStreetMap contributors)
リレーション(歩道)の例(©OpenStreetMap contributors

タグは「key」と「value」で構成され、主に2つの形式があります。1つ目は、keyが大まかな分類を、valueが細かな分類を示す場合です。例えば「amenity=post_box」は郵便ポストを、「highway=trunk」は国道を表します。2つ目は、keyが属性を、valueがその具体的な値を示す場合です。例えば「opening_hours=09:00-21:00」は「営業時間が9時から21時までである」ことを、「name=セイコーマート」は「名前がセイコーマートである」ことをそれぞれ示します。

なお、主要なタグを確認したい場合は、OpenStreetMapのWikiページ「Map Features」「How to map a」をご覧ください。

keyとvalueは慣習で「key=value」と表現されることがあります

OpenStreetMapデータの特徴

メリット

OpenStreetMapは他のオープンデータと比較して、リアルタイム性データの多様性が特長として挙げられます。国土地理院などが提供する地図データは基本的に年単位で更新されますが、OpenStreetMapは数分のうちにWebサイトへ反映されます。さらに他のオープンデータでは学校や駅などの公共施設に関するデータが主ですが、OpenStreetMapでは公共機関はもちろんのこと、街中の自動販売機やゴミ箱からキャンプ場まで幅広いデータが含まれています。

デメリット

OpenStreetMapは他のデータと比較すると、網羅性と正確性が低いという課題があります。

これは、ユーザーによる編集を基本としているため、編集が活発でない地域では道路や施設の情報が未登録であったり、更新されていない場合があるためです。

また、タグについてもユーザーが自由に記述・作成できる仕組みとなっています。基本的なタグの使用方法はユーザーコミュニティによって定められ、OpenStreetMap Wikiに記載されていますが、あまり使用されていないタグや入力ミスが存在する可能性があります。

ただし、このような網羅性や正確性の低いデータは、逆に改善の機会ともなります。そのような箇所を見つけた際は、ぜひ自分で情報を追加・更新してプロジェクトに貢献してみましょう。

QGISでOpenStreetMapのデータを利用する

OpenStreetMapのデータを利用してQGISで何らかの分析や地図の作成するには、まずデータを取得する必要があります。データの取得には以下のサービスやQGISプラグインが利用できます。

geofabrik

geofabrikはOpenStreetMapのデータを国別や地域別に切り出して提供しているサイトです。 OpenStreetMapは公式に提供するデータは地球全体のみですが、geofabrikを利用することでアジアの全データ、日本の全データや北海道の全データなどと、地域、国や地方ごとにデータを取得することができます。

配布されているデータはQGISで扱えるフォーマット(.shp、.pbf)で提供されています。

geofabrikのトップページ
geofabrikのトップページ

QuickOSM

QuickOSMはQGIS上でOpenStreetMapからデータを取得することができるQGISのプラグインです。OpenStreetMapのデータから、条件を満たすデータのみを絞り込んで取得する、といったことが全てQGIS上で完結します。

このプラグインは、OpenStreetMapのデータから条件に基づいて地物を抽出できるOverpass APIを基に実装されています。

QuickOSMの画面
QuickOSMの画面

overpass turbo

overpass turboはWeb上でOverpass APIのクエリを実行できるツールです。このツールを使用することで、OpenStreetMapのデータベースに対して特定の条件で検索を行い、その結果を地図上で即座に確認することができます。また、検索結果は地図上での視覚的な確認だけでなく、データの属性情報も表示することが可能です。

overpass turboの画面
overpass turboの画面

検索結果はGeoJSONなどの形式でダウンロードできるため、QGISですぐに表示できます。

GeoJSONなどの形式でダウンロード可能
GeoJSONなどの形式でダウンロード可能

OpenStreetMapを背景地図として利用する

QGISではOpenStreetMapを背景地図として利用するための設定がデフォルトで入っているため、簡単にOpenStreetMapを背景地図として利用することができます。

QGISでOpenStreetMapを表示(©OpenStreetMap contributors)
QGISでOpenStreetMapを表示(©OpenStreetMap contributors

OpenStreetMapを背景地図として利用する具体的な手順は、以下の記事で詳しく解説しています。

おわりに

この記事では、OpenStreetMapの特徴、基本概念、そしてQGISでの利用方法を紹介しました。OpenStreetMapは誰でも自由に利用できる地図データであり、豊富な情報量を持っていることから、QGISユーザーにとって地図作成や分析の際に貴重なデータとなります。ぜひ利用してみてください。

また、OpenStreetMapは多くの人々の貢献によって支えられています。地図を利用するだけでなく、身近な地域のデータを追加・修正することでプロジェクトに参加できます。

地図を使うだけでなく、作る楽しさも味わってみませんか?

参考文献

この記事を書いた人
QGIS LAB編集部
QGIS LAB編集部

QGIS LABは、オープンソースのGISソフトウェア「QGIS」に関する総合情報メディアです。「位置から、価値へ。」をコンセプトに、位置情報で世界を拓くための知識と技術をお届けします。

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