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QFieldで写真や動画を添付する方法〜設定方法から現地調査での使い方まで〜

投稿日: 最終更新日:
この記事はQGIS 3.40を使用しています。

この記事でわかること


  • QGISで添付ファイル用の属性を設定する方法
  • QFieldで写真や動画、音声などのファイルを地物に関連付ける手順
  • 添付機能を活用して、現地調査をより効率化するためのヒント

こんな人におすすめ


  • 現地調査で撮影した写真やメモの整理にお困りの方
  • QFieldの便利な機能をもっと活用したい方
  • 紙の野帳からデジタルでのデータ収集に移行したい方

はじめに

現地調査を行う際、調査で得た情報を属性に入力するだけでなく、現場の写真撮影が必要な場面も多いでしょう。QFieldでは、写真や動画、音声といったさまざまなファイルを地物に簡単に添付できます。この機能により、データ収集と管理の効率が大幅に向上します。

QFieldで地物に写真が関連付けられている例(地理院タイルを加工して作成)
QFieldで地物に写真が関連付けられている例(地理院タイルを加工して作成)

この記事では、QFieldで地物に写真などの添付ファイルを設定する方法と、より効率的に活用するためのヒントについて紹介します。

QGISで添付ファイル型属性の作成方法

QFieldでこの機能を活用するには、まずQGISで対象のレイヤにファイル添付用の属性を設定する必要があります。

QGISプロジェクトを開き、テキスト型の属性(この例では「media」)を追加します。次に、対象レイヤのプロパティを開いて「属性フォーム」タブで該当する属性を選択します。そしてウィジェット型として[アタッチメント]を選択します。

QGISの属性フォームから、ウィジェット型を[アタッチメント]に設定
QGISの属性フォームから、ウィジェット型を[アタッチメント]に設定

設定が完了すると、属性編集フォームで地物を編集する際、対象の属性にファイルを選択するための[…]ボタンが表示され、添付ファイルを設定できるようになります。

テキスト型の属性が添付ファイルとして表示された
テキスト型の属性が添付ファイルとして表示された

属性フォームの設定方法について、より詳しい情報は以下の記事をご覧ください。

QFieldで属性値にファイルを添付する

QFieldで地物にファイルを添付する

続いて、QFieldアプリでどのように表示されるか確認しましょう。QGISプロジェクトを保存し、モバイルデバイスに転送してください。

プロジェクトの転送方法の詳細については、以下の記事をご覧ください。

プロジェクトの転送が完了したら、QFieldで対象のプロジェクトを開きます。編集モードで地物をタップすると、該当の属性が添付ファイルを設定できるようになっています。

QFieldで添付ファイル型の属性が表示された(地理院タイルを加工して作成)
QFieldで添付ファイル型の属性が表示された(地理院タイルを加工して作成)

[ファイルアイコン]をタップすると、モバイルデバイス内のファイルを選択して地物に添付できます。

属性パネルで[ファイルアイコン]をタップ(地理院タイルを加工して作成)
属性パネルで[ファイルアイコン]をタップ(地理院タイルを加工して作成)

例として写真を選択すると、選択した画像が属性パネルに表示されます。

地物に写真が添付された(地理院タイルを加工して作成)
地物に写真が添付された(地理院タイルを加工して作成)

また、対象の属性の右側にある[…]ボタンをタップすることで、写真・動画撮影や音声録音ができるメディア添付オプションが表示されます。これにより、様々な形式のファイルを地物に直接関連付けることができます。

添付オプションのメニュー(地理院タイルを加工して作成)
添付オプションのメニュー(地理院タイルを加工して作成)

添付可能なファイルの種類

QFieldで添付できるさまざまなメディアの種類を紹介します。

写真ファイル

デバイスに保存済みの画像を添付できるだけでなく、現地で直接写真を撮影して添付することも可能です。

写真が添付された状態(地理院タイルを加工して作成)
写真が添付された状態(地理院タイルを加工して作成)

また、セルの右上にある曲線アイコンをタップすると、画像に直接スケッチを追加できます。写真に矢印や丸などの注釈を付ける際に便利です。

画像に注釈を追加した状態(地理院タイルを加工して作成)
画像に注釈を追加した状態(地理院タイルを加工して作成)

動画ファイル

地物に動画を添付することで、周囲の環境を詳細に記録したり、対象物を様々な角度から確認できるようになります。

動画が添付された状態(地理院タイルを加工して作成)
動画が添付された状態(地理院タイルを加工して作成)

音声ファイル

音声ファイルを地物に添付したり、現場で直接録音することができます。周囲の環境音を記録したり、タイピングが困難な状況で詳細な観察を音声で記録したりする場合に特に役立ちます。

録音が添付された状態(地理院タイルを加工して作成)
録音が添付された状態(地理院タイルを加工して作成)

手描きスケッチ

QFieldには手描きスケッチ機能が搭載されています。この機能は、写真や文章だけでは説明しにくい現場状況や複雑な配置を図解で表現したいときに便利です

スケッチが添付された状態(地理院タイルを加工して作成)
スケッチが添付された状態(地理院タイルを加工して作成)

ドキュメントファイル

マルチメディアファイル以外にも、PDFなどのドキュメントファイルを添付できます。これにより、分析レポートや仕様書といった資料をデータと直接関連付けられるようになります。

PDFファイルが添付された状態(地理院タイルを加工して作成)
PDFファイルが添付された状態(地理院タイルを加工して作成)

QGISでの添付ファイル確認

次に、QFieldで添付したファイルをQGISで確認してみましょう。

QFieldプロジェクトのパッケージをモバイルデバイスからコンピューターに転送し、QGISでプロジェクトファイルを開きます。また、QField Syncプラグインを使用して元のQGISプロジェクトに同期することも可能です。

QFieldで編集した地物の属性テーブルを確認すると、添付ファイルのパスが表示されています。

添付ファイルのプレビューが表示されない理由は、属性フォームの設定でビューアの種類として「画像」を指定していないためです。この設定方法については次の章で説明します。
添付ファイルのパスが表示された(地理院タイルを加工して作成)
添付ファイルのパスが表示された(地理院タイルを加工して作成)

また、ファイルエクスプローラーでQFieldプロジェクトフォルダを確認すると、「files」フォルダに添付したファイルが保存されていることがわかります。

添付したファイルが「files」フォルダに保存されている
添付したファイルが「files」フォルダに保存されている
属性フォームで統合ドキュメントビューアの型を設定していない場合、添付ファイルのデフォルト保存先は「files」フォルダとなります。初期設定として、ビューアの種類を「画像」「ビデオ」「オーディオ」に指定すると、保存先フォルダ名はそれぞれ「DCIM」、「video」、「audio」となります。

添付機能を最大限に活用するヒント

この章では、QFieldでのデータ入力をより効率的に行うためのいくつかの実用的なヒントを紹介します。

マルチメディアファイルをワンタップで記録する

QGISでは、レイヤプロパティの属性フォームの設定で「統合ドキュメントビューアの型」を画像、オーディオ(録音)、ビデオ(動画)などのファイルコンテンツの種類として設定できます。

この設定をすることで、QField内の添付ファイル属性にショートカットボタンが作成され、ワンタップで特定のマルチメディアを記録できるようになります。

統合ドキュメントビューアの型に[画像]を選択
統合ドキュメントビューアの型に[画像]を選択

例えば[画像]を選択すると、ファイル添付アイコンの代わりに写真撮影ボタンが表示され、現地でワンタップで写真を撮影できるようになります。

写真撮影ボタンが表示された(地理院タイルを加工して作成)
写真撮影ボタンが表示された(地理院タイルを加工して作成)
[…]ボタンをタップすることで、動画や音声といった他の種類のファイルも添付できます。

また、「統合ドキュメントビューアの型」を設定することで、QFieldで登録した画像がQGISの属性フォームでも確認できるようになります

QFieldで登録した画像がQGISの属性フォームで表示された
QFieldで登録した画像がQGISの属性フォームで表示された

添付画像の最大サイズを設定する

添付画像の最大サイズを設定することで、プロジェクトの容量を節約できます。この設定はQGIS内で行います。

メニューバーより、[プロジェクト]→[プロパティ]を選択します。

プロジェクトメニューから[プロパティ]をクリック(地理院タイルを加工して作成)
プロジェクトメニューから[プロパティ]をクリック(地理院タイルを加工して作成)

プロジェクトプロパティの画面で「QField」タブを選択します。なお、このタブはQField Syncプラグインをインストールすると表示されるようになります。

[添付ファイルとフォルダ]タブをクリックすると、「添付される画像の最大許容幅または最大高さ」をピクセル単位で指定できます。

「添付される画像の最大許容幅または最大高さ」を設定
「添付される画像の最大許容幅または最大高さ」を設定

例えば、最大サイズを800ピクセルに設定すると、その後に登録された画像は自動的にこのサイズに圧縮されます

画像が自動的に800ピクセルに圧縮された
画像が自動的に800ピクセルに圧縮された

添付写真に位置情報やタイムスタンプを追加する

写真に撮影時刻、位置情報、その他のカスタム情報を自動的に追加することができます

この機能を設定するには、QGISプロジェクトのプロパティで「QField」タブを選択し、[添付ファイルとフォルダ]タブをクリックします。次に、「画像スタンプの詳細をカスタマイズ」項目の[設定]ボタンをクリックします。

「画像スタンプの詳細をカスタマイズ」項目の[設定]ボタンをクリック
「画像スタンプの詳細をカスタマイズ」項目の[設定]ボタンをクリック

[QFieldカメラで撮影した画像を常にスタンプする]にチェックを入れることで、日付、時間、座標といった情報が表示されます。また、「詳細テンプレート」内の式を修正することで、表示される情報をカスタマイズできます。

[QFieldカメラで撮影した画像を常にスタンプする]オプションにチェック
[QFieldカメラで撮影した画像を常にスタンプする]オプションにチェック

この設定をQFieldに反映させると、撮影した写真に撮影日や撮影場所の緯度経度、標高といった情報が自動的に追加されていることが確認できます。

撮影した写真に情報が自動的に追加された
撮影した写真に情報が自動的に追加された

添付ファイル名や保存先をカスタマイズする

添付ファイル名はデフォルトでは「レイヤ名_日時_添付ファイル名」という形式になります。しかし、ファイル名を特定の属性値に基づいてカスタマイズしたい場合もあるでしょう。この設定は対象レイヤのプロパティにある[QField]タブから変更できます。

例えば、「files」フォルダ内に「対象属性の値_日時.拡張子」という命名形式にするには、「添付ファイルの設定」内の対象属性行の「命名式」列の[ε]をクリックして、 'files/' || "対象の属性名" || '_' || format_date(now(),'yyyyMMddhhmmss') || '.{extension}' と入力します。

添付ファイルの設定で命名式を記入
添付ファイルの設定で命名式を記入

この設定を適用すると、添付ファイルには地物の属性値と日時を組み合わせた名前が自動的に付与されます

登録されたファイルには地物名と日時が組み合わされた名前が自動的に付与された(地理院タイルを加工して作成)
登録されたファイルには地物名と日時が組み合わされた名前が自動的に付与された(地理院タイルを加工して作成)

また、添付ファイルを登録日ごとにフォルダを整理したい場合は、'files/' || format_date(now(),'yyyyMMdd') || '/' || format_date(now(),'yyyyMMddhhmmss') || '.{extension}' という式を入力します。

登録日ごとにフォルダを自動整理するための式
登録日ごとにフォルダを自動整理するための式

これにより、日付ごとのフォルダに添付ファイルが自動的に整理されます。

日付ごとのフォルダに添付ファイルが自動的に整理された
日付ごとのフォルダに添付ファイルが自動的に整理された

おわりに

この記事では、QFieldで使用できる添付ファイル型属性の設定方法と、現地調査における写真、動画、録音、スケッチなどのさまざまなメディアの活用方法を紹介しました。これらの機能を活用することで、従来の紙ベースの調査と比較して、より正確で詳細なデータ収集が可能になります

また、画像添付機能にはさらに高度なオプションも用意されています。詳細については、以下の記事をご参照ください。

この記事を書いた人
QGIS LAB編集部
QGIS LAB編集部

QGIS LABは、オープンソースのGISソフトウェア「QGIS」に関する総合情報メディアです。「位置から、価値へ。」をコンセプトに、位置情報で世界を拓くための知識と技術をお届けします。

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