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QGISでベクタレイヤの座標系を変換する方法〜再投影の手順を解説〜

投稿日: 最終更新日:
この記事はQGIS 3.40を使用しています。

この記事でわかること


  • ベクタレイヤの座標系(CRS)を変更する方法
  • プロセシングツール「ベクタレイヤを再投影」の使い方

こんな人におすすめ


  • GISデータを異なる座標系に変換したい方
  • 測量や解析のために平面直角座標系へ変換したい方
  • QGISの基本操作に慣れてきて、座標系について学びたい方

はじめに

GISデータには「座標系(CRS:Coordinate Reference System)」が設定されています。QGISで地理情報を正確に表示・解析するためには、適切な座標系での処理が不可欠です。

この記事では、QGISのプロセシングツール「ベクタレイヤを再投影」を使用して、レイヤの座標系を変換する方法を説明します。

座標系の基本的な概念について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

座標系を変換する必要があるケース

「ベクタレイヤを再投影」は、現在の座標系を別の座標系に変換するためのツールです。例えば、世界全体を扱う「EPSG:4326 - WGS84」から、日本の測量で使われる「平面直角座標系」へ変換することができます。

再投影が必要になる場面としては、次のようなものがあります。

  • 地理座標系から投影座標系に変換する必要がある場面
    • 距離や面積を正確に計測したいとき
    • バッファの作成など、距離に基づいた空間解析を行いたいとき
  • データの座標系を揃える必要がある場面
    • 解析に使用する複数のデータの座標系を統一したいとき
    • 成果品提出時に、公的機関や研究機関から指定された座標系に合わせたいとき

「ベクタレイヤを再投影」による座標系の変換手順

QGISにはいくつかの再投影方法がありますが、ここではプロセシングツールの「ベクタレイヤを再投影」を使った手順を紹介します。

レイヤの準備と座標系の確認

ここでは国土地理院が提供する埼玉県の指定緊急避難場所データを例に説明します。

まず、レイヤプロパティを開いて[情報]タブでレイヤの座標系を確認します。このレイヤは、GPSなどで広く使われている世界測地系「WGS84(EPSG:4326)」で作成されており、単位は「地理的(経緯度を座標に使用)」であることがわかります。

レイヤプロパティの情報タブでレイヤの座標系の情報確認できる(地理院タイルを背景として、指定緊急避難場所データ(国土地理院)を加工して作成)
レイヤプロパティの情報タブでレイヤの座標系の情報確認できる(地理院タイルを背景として、指定緊急避難場所データ(国土地理院)を加工して作成)

今回は、このレイヤを日本の公共測量で広く利用される「JGD2011 平面直角座標系」に変換します。平面直角座標系は日本を19の区域に分割しており、埼玉県は第9系に該当します。

日本の平面直角座標系(出典:国土地理院)
日本の平面直角座標系(出典:国土地理院

「ベクタレイヤを再投影」の開き方と設定

メニューバーから[ベクタ]→「データ管理ツール」→[ベクタレイヤを再投影]をクリックします。

[ベクタレイヤを再投影]をクリックして起動する
[ベクタレイヤを再投影]をクリックして起動する

表示された「ベクタレイヤを再投影」画面で以下の項目を設定します。

  1. 入力レイヤ:座標系を変換したいレイヤを選択します。
  2. 変換先CRS:[地球儀アイコン]をクリックし、変換先の座標系を選択します(座標系の探し方は後述)
  3. 再投影されたベクタレイヤ:保存先を[…]から指定します。選択しない場合は一時レイヤが出力されます。

上記の設定が完了したら[実行]ボタンをクリックします。

入力レイヤや変換先CRSを選択して、[実行]ボタンをクリック
入力レイヤや変換先CRSを選択して、[実行]ボタンをクリック

結果の確認

実行が完了すると、新しいレイヤが追加されます。QGISはオンザフライ機能により異なる座標系であっても、マップ上に重なって表示されるため、見た目としては特に変化はありません

出力レイヤのプロパティを開き、「情報」タブの座標参照系を確認すると、名前が「JGD2011 / Japan Plane Rectangular CS Ⅸ」、単位が「メートル」と表示され、座標系が正しく変換されていることがわかります。

座標系が平面直角座標系に変換されている
座標系が平面直角座標系に変換されている

座標系の探し方

「ベクタレイヤを再投影」ツールで「変換先CRS」を設定する際は、[地球儀アイコン]をクリックして座標系選択画面を開きます。

「変換先CRS」から[地球儀アイコン]をクリック
「変換先CRS」から[地球儀アイコン]をクリック

QGISには多数の座標系が登録されているため、目的の座標系を素早く見つけるにはフィルタ機能を活用しましょう。

例えば、今回の変換用に使用した座標系は「JGD2011 平面直角座標系」です。フィルタに「JGD2011」と入力すると、「あらかじめ定義された座標参照系(CRS)」にフィルタと一致する座標系が表示されます。

表示された一覧は、地心座標系、地理座標系、投影座標系などの座標系の種類ごとに分類されています。平面直角座標系は投影座標系に分類されるため、投影座標系の中から「Japan Plane Rectangular」という表記を探して目的の座標系を選択します。

フィルタに「JGD2011」と入力する
フィルタに「JGD2011」と入力する

一覧から座標系を選択すると、画面下部にその座標系が対応する地理的範囲が表示されます。この情報も確認しながら選択するとより正確に設定できるでしょう。

「Japan Plane Rectangular」という表記を探して目的の座標系を選択する
「Japan Plane Rectangular」という表記を探して目的の座標系を選択する

また、座標系を識別するための国際的なコードである「EPSGコードを覚えておくと便利です。例えば、先ほど使用した「JGD2011 平面直角座標系第9系」は「EPSG:6677」として登録されています。

フィルタにはEPSGコードも入力できるため、座標系を選択する際に、このEPSGコードで検索するとスムーズに目的の座標系を見つけることができます。

フィルタにはEPSGコードを入力することもできる
フィルタにはEPSGコードを入力することもできる

おわりに

この記事では、「ベクタレイヤを再投影」機能を使用した座標系変換の方法を解説しました。適切な座標系への変換により、より精度の高い解析が可能になります。実際の作業では座標系の変換が必要となる場面が多くあります。QGISでの座標系変換の方法を覚えて、日常の作業に活かしてください。

この記事を書いた人
QGIS LAB編集部
QGIS LAB編集部

QGIS LABは、オープンソースのGISソフトウェア「QGIS」に関する総合情報メディアです。「位置から、価値へ。」をコンセプトに、位置情報で世界を拓くための知識と技術をお届けします。

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