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QGISにおける座標系の設定の基本と手順

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この記事はQGIS 3.34を使用しています。

この記事でわかること


  • 座標系の基本的な概念
  • QGISでのプロジェクト座標系の設定方法
  • レイヤごとの座標系の確認と設定方法

こんな人におすすめ


  • レイヤやプロジェクトの座標系の設定の仕方を知りたい方
  • QGISを始めたばかりで座標系の設定に不安がある方

はじめに

GISを操作する上で避けて通れない概念として「座標系(CRS:Coordinate Reference System)」という概念があります。座標系とは、地球上の位置を緯度経度といった座標で表現するための基準であり、座標系の設定は、正確な地理情報を取り扱うための重要な要素です。

この記事では、GIS初心者向けに座標系について簡単に説明しつつ、QGISにおけるプロジェクトやレイヤの座標系の設定方法について解説します。

座標系についての基礎知識

今回はQGISを使用する上でよく使う、緯度経度を用いる「地理座標系」と、地球表面を平面として投影する「投影座標系」の2つを簡単に紹介します。

地理座標系

地球上の位置を緯度・経度で表現する方法です。WGS84のような世界標準的な座標系があり、グローバルスケールでのデータ共有やGPS測位などに活用されます。日本では、JGD2011が国内標準の地理座標系として広く採用されています。

地理座標系の概念図(引用:国土地理院)
地理座標系の概念図(引用:国土地理院

投影座標系

地球表面を平面に投影した座標系です。メルカトル投影やUTM投影など、様々な投影法があります。特定地域での距離や面積の計測がしやすいなど、目的やエリアに合わせて最適な投影を選ぶことで、分析の精度と利便性が向上します。

日本では、JGD2011を基準とした平面直角座標系が全国で使用されています。この座標系は日本列島を19のゾーン(系)に分割し、各ゾーンの原点から東西南北への距離(メートル)で位置を表現します。

日本の平面直角座標系(出典:国土地理院)
日本の平面直角座標系(出典:国土地理院

EPSGコードとは

座標系については、EPSGコードという地理空間データの座標系を一意に識別するためのコードが付与されています。このコードは、国際的な標準として広く使用されており、QGISにおいて座標系を指定する際に利用します。

日本でよく使われている座標系とEPSGコード

EPSGコード

名称

説明

座標系の種類

4612

JGD2000

日本国内で従来の測地系(Tokyo Datum)から移行する際に整備された世界測地系ベースの座標系。

地理座標系

6668

JGD2011

日本の現行の基準座標系。2011年に生じた東北沖地震による地殻変動を考慮した測地系

地理座標系

4326

WGS84

GPSデータやグローバルな地図作成で広く用いられている標準的な地理座標系。

地理座標系

2443〜2461

JGD2000 平面直角座標系

JGD2000を基準に、日本国内を19のゾーンに区分した平面直角座標系。各ゾーンごとに異なるEPSGコードが割り当てられる。

投影座標系

6669〜6687

JGD2011 平面直角座標系

JGD2011を基準に、日本国内を19のゾーンに区分した平面直角座標系。各ゾーンごとに異なるEPSGコードが割り当てられる。

投影座標系

3857

Webメルカトル

Web地図(Google Maps、OpenStreetMap等)で標準的に用いられる擬似メルカトル投影座標系。

投影座標系

プロジェクト座標系の基本知識

QGISの各プロジェクトには固有の座標系が設定されており、この座標系の設定により、QGISに追加されたデータがマップキャンバス上でどのように表示されるかが決定されます。

たとえば、OpenStreetMapをWebメルカトル(EPSG:3857)で表示すると世界全体が正方形として表現された地図として表示されます。

OpenStreetMapをWebメルカトルで表示した例(©︎OpenStreetMap contributors)
OpenStreetMapをWebメルカトルで表示した例(©︎OpenStreetMap contributors)

次に、これをWGS84(EPSG:4326)に変更すると、地球が横に引き延ばされたような地図に表示が切り替わることが確認できます。

OpenStreetMapをWGS84で表示した例(©︎OpenStreetMap contributors)
OpenStreetMapをWGS84で表示した例(©︎OpenStreetMap contributors)

また、QGISには「オンザフライ」という機能が備わっているため、プロジェクトやレイヤの座標系が異なっていても、プロジェクトで設定された座標系に自動的に変換されます。この仕組みによって、レイヤ同士が正しい位置関係で表示され、統一された地図を作成することが可能です。

下記の図では、プロジェクトの座標系をWGS84に設定し、レイヤとしてWebメルカトルで作成されているOpenStreetMap、JGD2011で作成されている日本の行政区域データをレイヤリングして表示しています。

複数の座標系がプロジェクト内でどのように表示されるか示した例(OpenStreetMapを背景に「国土数値情報(行政区域データ)」(国土交通省)を加工して作成(©︎OpenStreetMap contributors))
複数の座標系がプロジェクト内でどのように表示されるか示した例(OpenStreetMapを背景に「国土数値情報(行政区域データ)」(国土交通省)を加工して作成(©︎OpenStreetMap contributors))

プロジェクトの座標系の確認・変更方法

プロジェクトの座標系は、画面右下の[EPSG:XXXX]から確認することができます。

プロジェクトの座標系は、画面右下の[EPSG:XXXX]から確認できる
プロジェクトの座標系は、画面右下の[EPSG:XXXX]から確認できる

[EPSG:XXXX]と表示されているボタンをクリックすることで「プロジェクトプロパティ」画面が表示され、こちらからプロジェクトの座標系を変更することが可能です。

プロジェクトの座標系の設定画面
プロジェクトの座標系の設定画面

新規プロジェクト作成時の座標系の設定

プロジェクトの座標系については、初期設定ではプロジェクトに最初に追加されたレイヤの座標系が自動で設定されます。

これを変更したい場合は次の手順により変更が可能です。メニューバーより、[設定]→[オプション]を選択します。

メニューバーより、[設定]→[オプション]を選択する
メニューバーより、[設定]→[オプション]を選択する

続いて、左側のリストより、[座標参照系と変換]の中にある[CRSの扱い]を選択します。上部に「プロジェクトの座標系(CRS)」欄が表示されているため、ここから、「最初のレイヤのCRSを使う」か「デフォルトのCRSを使う」のどちらかお好みの方を選択しましょう。

新規にプロジェクトが作成された場合の座標系の設定を変更できる
新規にプロジェクトが作成された場合の座標系の設定を変更できる

レイヤの座標系について

QGISに追加したレイヤは、そのレイヤがどの座標系で作成されているかの情報を持っていますこの座標系の情報があることにより、他のレイヤと重ねて表示することが可能です。

レイヤの座標系の確認

QGIS上でレイヤを追加する際は、まずそのレイヤがどの座標系で作成されているかを把握しておくと良いでしょう。

例えば、国土数値情報の行政区域データでは、ダウンロードページの「座標系」欄に「JGD2011/ (B, L)」(「B, L」= ドイツ語のBreite(緯度)とLänge(経度)の頭文字をとったもの)と記載されています。これは、このデータがJGD2011の緯度経度の座標系で作成されていることを示しています。

「座標系」の欄に「JGD2011/ (B, L)」と記載されている
「座標系」の欄に「JGD2011/ (B, L)」と記載されている

続いてQGIS上でそのレイヤがどのような座標系で描画されているかを確認してみます。

レイヤの座標系は、レイヤプロパティより確認することができます。レイヤパネルより対象のレイヤを右クリックして、[プロパティ]を選択します。

対象のレイヤを右クリックして、[プロパティ]を選択
対象のレイヤを右クリックして、[プロパティ]を選択

続いて、左側のリストから[情報]タブを選択すると、「空間参照システム(CRS)」という欄に対象のデータの座標系が表示されています。

このレイヤは、名前がJGD2011(EPSG:6668)、単位が「地理的(緯経度)」となっていることから、「JGD2011の緯度経度の座標系(地理座標系)」で設定されているということが確認できます。

「空間参照システム(CRS)」という欄に対象のデータの座標系が表示されている
「空間参照システム(CRS)」という欄に対象のデータの座標系が表示されている

これは先ほど国土数値情報のページで確認した座標系の情報と一致しており、QGIS上でもこのデータが正しい座標系で描画されていることがわかります。

もしここで、データ自体に定義されている座標系とQGIS上での座標系が異なる場合は、適切な座標系に変更しましょう。

レイヤの座標系の変更

座標系を変更するにはプロパティの[ソース]タブを開きます。「設定されたCRS」という欄に、先ほど情報タブで確認した「JGD2011(EPSG:6668)」が設定されていることが確認できます。

もし、座標系を変更したい場合は、[地球儀]ボタンからデータの座標系を変更することが可能です。

なお、この設定はデータがどの座標系で作成されているかをQGISに伝えるためのものであり、これを変更してもデータ自体の座標系は変換されません。データの座標系そのものを変更したい場合は、「再投影」機能を使用する必要があるので注意が必要です。

「設定されたCRS」から、レイヤの座標系を変更できる
「設定されたCRS」から、レイヤの座標系を変更できる

座標系の情報を持たないレイヤ追加時の設定について

QGISでは、座標系の情報を持たないレイヤを追加した際の座標系の設定方法を選択できます。設定は次の手順で変更できます。

メニューバーより、[設定]→[オプション]を選択し、左側のリストより[座標系と変換]の中にある[CRSの扱い]を選択します。

「レイヤのCRS」という欄に、「新規レイヤが作成された場合、CRSのないレイヤが読み込まれた場合」ということでいくつかの選択肢が表示されています。

座標系の情報を持たないレイヤをQGISに追加した時の設定画面
座標系の情報を持たないレイヤをQGISに追加した時の設定画面

特定の座標系のデータしか扱わない場合は、「プロジェクトのCRSを使う」や「デフォルトCRSを使う」を選択しておいても良いかもしれませんが、一般的にはさまざまな種類の座標系のレイヤを使用することが想定されるため、「CRSダイアログを表示する」を選択しておくと良いでしょう。

おわりに

この記事では、座標系の基本的な説明から、QGISでの具体的な操作方法まで解説しました。 プロジェクトやレイヤの座標系を変更する機会は頻繁に発生するので、設定方法をしっかりと把握しておくとよいでしょう。

この記事を書いた人
QGIS LAB編集部
QGIS LAB編集部

QGIS LABは、オープンソースのGISソフトウェア「QGIS」に関する総合情報メディアです。「位置と情報で世界を変える」をコンセプトに、位置情報で世界を拓くための知識と技術をお届けします。

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