QGISに衛星データを簡単に追加する方法 〜JAXA Earth APIプラグインの使い方とデータセットの紹介〜
この記事でわかること
- JAXA Earth APIをQGISで利用して衛星データを取得する方法
- 衛星データを可視化するためのプラグインの使用方法
- QGISで衛星の観測データを重ね合わせる方法
こんな人におすすめ
- 衛星データをQGISで活用してみたい方
- JAXA Earth APIで取得できる衛星データについて知りたい方
はじめに
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、気温、降水量、植生などの地球観測データを公開しており、これらは「JAXA Earth API」を使用して取得することができます。そして、このAPIをもとに、QGISから数クリックで衛星データを検索・閲覧できるプラグインが「JAXA Earth API プラグイン」です。
この記事では、QGISの「JAXA Earth API プラグイン」を使用して、衛星データを取得する方法と使用できるデータセットについて説明します。
なお、衛星データの基本について知りたい方は宙畑の記事をご覧ください。
JAXA Earth APIとは
JAXA Earth APIは、PythonとJavaScriptで書かれた衛星データ配信サービスです。APIの詳細や利用可能なデータセットについては、公式サイトで確認できます。
JAXA Earth APIでは、標高・地表面温度・植生指数・降水量・土地被覆分類図など70件以上のデータセットが利用可能であり、様々な分野での利活用が見込まれます。
QGIS JAXA Earth API Pluginの使用方法
ここから、QGISで「JAXA Earth API プラグイン」をインストールし、衛星データを取得する手順を紹介します。
QGISでOpenStreetMapの背景地図を追加
プラグインを使用する前に、背景地図があると便利なので、まずは背景地図としてOpenStreetMapを表示します。
ブラウザパネルより、[XYZ Tiles]の中にある[OpenStreetMap]をダブルクリックします。
OpenStreetMapがマップキャンバスに表示されました。
JAXA Earth APIプラグインのインストール
次に「JAXA Earth APIプラグイン」をインストールします。
メニュー バーより[プラグイン] → 「プラグインの管理とインストール]をクリックします。
「プラグインマネージャー」が表示されます。以下の手順に従ってJAXA Earth APIプラグインをインストールできます。
- [全プラグイン]タブを選択
- 検索欄に
JAXA
と入力 - リストから[JAXA Earth API Plugin]を選択
- [インストール]ボタンをクリック
プラグインがインストールされると、「JAXA Earth API」のアイコンがツールバーに表示されます。
アイコンをクリックすると、プラグインのダイアログが表示されます。
プラグインの使用例
ヨーロッパの地域を対象に「月間の降雨量」のデータを表示してみましょう。
- 対象のデータセットを選択(例:[Precipitation Rate (Monthly)]、月間の降雨量)
- 取得期間を指定
- 対象の地図範囲を指定
a.[キャンバスの領域]ボタンをクリックして、現在のマップ範囲を設定。
b.[キャンバスで描画]ボタンをクリックしてカスタム範囲を設定することも可能。
- [ロード]ボタンを押してデータを読み込み。
指定した期間の衛星データが読み込まれました。なお、ここで検索条件に合致するデータセットが複数見つかった場合には複数レイヤ追加されます。
時系列でのアニメーション表示
降雨量のデータセットは、1レイヤが1ヶ月の単位で表示されます。これは時系列のデータとなっているので、「時系列コントローラ」を使うことで、この変化をアニメーションとして表示することも可能です。
これを行うには、各レイヤのプロパティで時系列タブから日付と時間を設定し、「時系列コントローラ」を使用してアニメーションを確認することができます。なお、JAXA Earth API Pluginによって追加されたレイヤには、日付と時間が自動で設定がされた状態で追加されます(一部設定されないデータセットも存在します)。
「時系列コントローラ」を表示するには、メニューバーより[ビュー]→[パネル]→[時系列コントローラ]にチェックを入れることで表示が可能です。
再生ボタンをクリックして、時系列でデータを表示をしてみましょう。時系列コントローラを使用することで、降雨量の月間推移をアニメーションで可視化することができます。
衛星データセットの紹介
では、ここからJAXA Earth APIで使用できる衛星データを3つ紹介します。
植生指数(NDVI)
「NDVI (正規化植生指数) 」は、光学衛星から得られる赤色光と近赤外線を使用して、植生の分布状況や活性度を定量化するための指標です。
植生指数の観測データは2018年から提供されており、月毎、半月毎、日毎の周期で利用可能です。そのため、季節ごとの植生の状況をモニタリングしたり、森林伐採や森林火災の影響を確認するために利用することができます。
以下の例は、インドネシアの新首都ヌサンタラ周辺における、2010年8月と2024年8月の植生指数の比較です。同一の地点を確認すると、植生指数がやや減少しており、都市開発が進んでいることが確認できます。
降雨量
日本とアメリカは、二周波降水レーダーを搭載した衛星群を使用して、降雨や降雪を高頻度で観測する「Global Precipitation Measurement (GPM)Mission」を主導しています。
降雨量の観測データは2000年から提供されており、月毎、半月毎、日毎の周期で利用可能です。また、降水量は年間を通じて、または季節ごとにモニタリングすることができます。
以下の例は、2024年の台風10号による日毎の降雨量の状況を時系列アニメーションで表示しています。台風により降雨量が増加していることが確認できます。
海氷密接度
2012年7月から、北極と南極の「海氷密接度データ」が毎日提供されています。これにより、長年にわたる氷床の変化をモニタリングすることが可能です。
この例では、2013年から2024年までの各年の1月1日の北極の観測データを視覚化しました。2020年代に入ってからは、氷がカナダのラブラドル半島まで届くことが少なくなっていることが確認できます。
おわりに
この記事で紹介したように、「JAXA Earth API プラグイン」を使用することで、簡単に衛星データをQGISに追加することがきます。さらに、QGISの時系列機能を使うことで、この変化をアニメーションとして表示することが可能です。
今回紹介した衛星データ以外にも、地表面温度、海面水温、数値表層モデルなど、70件以上のデータセットが提供されています。ぜひこちらからご覧ください。
https://data.earth.jaxa.jp/ja/datasets/
また、「JAXA Earth API Plugin」はオープンソースとして公開されています。バグの報告や改善案は、GitHubのリポジトリにissueを登録する形で行なってください。