QGISにおけるプロジェクト管理の基本 〜保存方法からレイヤのエラー処理まで〜
この記事でわかること
- QGISプロジェクトの保存や管理方法
- QGISプロジェクトファイルの共有方法
- QGISプロジェクトを開いた時にレイヤのエラーが出た時の対処法
こんな人におすすめ
- QGISプロジェクトの管理方法や共有方法について知りたい方
- QGISで毎回地図を作り直していた方
- QGISで「利用できないレイヤを処理する」という表示が出てきた方
はじめに
QGISでは、さざまなレイヤを追加しスタイリングを変更したりすることが可能ですが、その結果を「プロジェクトファイル」として保存することができます。プロジェクトファイルとして保存することで、作業結果を途中で保存できたり、スタイリングの設定などを再度設定する必要がなくなるので、とても便利な機能です。
この記事では、QGISにおけるプロジェクトの管理と保存方法について紹介します。
プロジェクトファイルとは
QGISにおける「プロジェクト」とはレイヤやスタイルの情報、これまでの作業内容などを記録したもので、それをファイルとして保存したものを「プロジェクトファイル」と言います。
プロジェクトファイルには、以下のような情報が含まれています。
- レイヤー情報: どのデータが使用されているか、レイヤーの種類、ファイルパス、表示設定など
- スタイル情報: レイヤーのシンボル、色、ラベルなど、地図の見た目に関する情報
- マップ設定: プロジェクト全体の座標系やスケール、背景色など、マップの基本設定
- レイアウト情報: 印刷レイアウトの設定情報
プロジェクトファイルを作成することで、作業の進捗や設定を再現可能な状態で保存し、後で再度開いて編集や分析を続けることができます。
作業フォルダの作成とデータの管理
QGISのプロジェクトファイルは、追加したレイヤを相対パスで管理しています。
相対パスとは、ファイルの保存場所をプロジェクトファイルから見た位置関係で指定する方法です。このため、レイヤやプロジェクトファイルを異なる場所に移動したり、ファイル名を変更したりしてしまうと、QGISが正しくレイヤを参照できなくなり、データが表示されなくなってしまいます。
これを防ぐため、レイヤやプロジェクトファイルは同じ作業フォルダ内に保存しておくことが望ましいでしょう。そうすることで、フォルダを移動したり他のパソコンにコピーしても、相対パスが崩れにくく、プロジェクトをスムーズに開けるようになります。特に、複数のユーザーでプロジェクトを共有する場合や、バックアップを取る際にも、作業フォルダ内にすべてのデータをまとめておくと、管理が楽になるでしょう。
プロジェクトの新規作成と保存
では、ここからプロジェクトを新規作成し、プロジェクトファイルとして保存するまでの手順について説明します。
プロジェクトの新規作成
適当な場所に作業フォルダを作成し、データの移動が完了したら、QGISを起動し新規プロジェクトを作成します。
メニューバーの[プロジェクト]から[新規]を選択することで、新規プロジェクトが作成されます。
なお、QGISを起動した際に表示される初期画面のプロジェクトテンプレートからも簡単に新規プロジェクトを作成できます。
プロジェクトを作成した後は、さまざまなレイヤを追加し、スタイルやラベルの設定をすることで、地図をカスタマイズしましょう。今回は、空港データ、鉄道データ、海岸線データを追加して、下記の図のようにスタイル設定を行いました。
プロジェクトの保存
プロジェクト内にレイヤの追加やスタイルの変更が完了したら、プロジェクトを保存します。
まだプロジェクトを保存していない場合、メニューバー上部の名称が「無題のプロジェクト」となっていることが確認できます。 なお、プロジェクト名の前にアスタリスクがついている場合は、前回保存した状態から何らか変更がされていることを示しています。アスタリスクが表示されている状態で、保存せずにプロジェクトを閉じると、それまでの変更が保存されないので注意が必要です。
メニューバーの[プロジェクト]から、[ファイルに保存]を選択します。
「QGISプロジェクトファイルを選択」の画面が開くため、上記で作業フォルダを作成した場所まで移動します。
続いて、下部の「ファイル名」にプロジェクト名を入力しましょう。この記事では、日本のさまざまなデータを使用しているため、「japan」と入力しました。入力が終わったら、[保存]ボタンをクリックしましょう。なお、「ファイルの種類」については、この後説明します。
これでプロジェクトファイルの作成が完了しました。メニューバー上部の名称も「japan」という名称に変更されたことが確認できます。
また、先ほどプロジェクトファイルの保存先として指定した場所にも、「japan.qgz」という名称でプロジェクトファイルが保存されていることが確認できます。
上記でも説明したように、プロジェクトファイルやプロジェクトで使用するデータは一つのフォルダ内で完結するようにしましょう。
プロジェクトファイルの拡張子について
QGISのプロジェクトファイルには、.qgz
と .qgs
の2つの拡張子があります。
「.qgz」 はQGIS 3.2以降に標準となった形式で、ZIP形式で圧縮されており、ファイルサイズが小さくなります。一方、.qgs
はXML形式の非圧縮ファイルとなっています。
QGIS3.2以降のQGISしか使用しないのであれば、現在の標準である.qgz
形式で保存を推奨します。
プロジェクトファイルの開き方
プロジェクトファイルの保存ができたので、プロジェクトを開いてみます。先ほど、保存したプロジェクトを開いている場合は、メニューバーの[プロジェクト]から[閉じる]を選択し、閉じておきましょう。
プロジェクトの開き方は、複数あるためそれぞれの方法について説明します。
最近使ったプロジェクトから開く
QGISを起動した時に表示されるウェルカムページには、「最近使ったプロジェクト」として、最近使用したプロジェクトがリスト形式で表示されています。
こちらから開きたいプロジェクトをダブルクリックすることで、プロジェクトを開くことが可能です。
ダブルクリックすることで、プロジェクトを保存した時の状態が再現されて表示されます。
プロジェクト→開くから選択
二つ目の方法は、メニューバーの[プロジェクト]から[開く(上から3つ目)]から開く方法です。
[開く]をクリックすると、「プロジェクトを開く」画面が表示されているため、開きたいプロジェクトファイルをダイアログから選択し、下部の[開く]ボタンをクリックすることで、プロジェクトファイルを開くことができます。
プロジェクトファイルをダブルクリック
プロジェクトファイルを直接ダブルクリックすると、QGISが新しく起動され、プロジェクトファイルを開くことができます。
なお、PC側の設定で、QGISのアプリケーションとプロジェクトファイルが紐づけられてないとこの方法で起動できない可能性があります。
プロジェクトの共有方法
プロジェクトを他のユーザーと共有する場合や、別のパソコンで作業を続ける場合には、プロジェクトファイルだけでなく、使用されているすべてのデータファイルも一緒に共有する必要があります。
上記でも説明した通り、QGISはレイヤを相対パスで管理しているため、異なるフォルダに使用しているデータが分散していると、不意にフォルダの名前を変更してしまったり、データの場所がわからなくなったりして、プロジェクトを開いた際にデータの保存先が見当たらず、データが表示されなくなる危険性が高まります。
そのため、プロジェクトやデータを管理する際には、プロジェクトファイルとそれに使用している全てのデータが同じフォルダ内に保存されていることが望ましいでしょう。
一つの作業フォルダ内に、プロジェクトファイルと使用するすべてのレイヤに保存ができていることが確認できたら、その作業フォルダごとZipファイルに圧縮して他のユーザーに共有しましょう。
共有されたデータは、Zipファイルを解凍してプロジェクトファイルを開くことで、保存した時の状態が再現されて表示することができます。
プロジェクトを開いた時にレイヤのエラーが発生したら
プロジェクトを開いた時に、「利用できないレイヤを処理する」という画面が表示される場合があります。
上記で説明したように、QGISのプロジェクトファイルは、追加したレイヤを相対パスで管理してるため、プロジェクトファイルやデータの場所を変更したり、データのファイル名を変更してしまったりすると、QGISがレイヤの場所を見つけることができずこのようなエラーが発生します。
対処方法としては、エラーの発生しているレイヤを選択し、下部の「ブラウザ」ボタンから対象のファイルを選択しましょう。また、[自動探索]ボタンを押すことで、自動で対象のファイルを見つけ出してくれる可能性があります。
作業フォルダ内で、レイヤの格納されているフォルダ名が変更されている場合は自動でファイルを特定してくれますが、ファイル名が変更されている場合は特定することができないので、その場合は「ブラウザ」から目的のファイルを選択しましょう。
おわりに
QGISにおけるプロジェクトの管理と保存は、効率的な作業環境を維持するためにとても便利な機能です。
プロジェクトを適切に保存することで、他のユーザーへの共有も便利になるため、作業フォルダ内でデータを完結させて管理するようにしましょう。