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地理情報システム(GIS)について知ろう! できること、活用事例についてご紹介

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この記事はQGIS 3.34を使用しています。

この記事でわかること


  • GISとは何か
  • GISでできること
  • GISの活用事例

こんな人におすすめ


  • GISとは何かを知りたい方
  • これからGISを始める方

はじめに

私たちの生活やビジネスの中で、位置情報を活用する場面が増えています。その位置情報を効率的に管理・活用できるのが「地理情報システム(GIS)」です。GISは、日常生活や様々な分野で役立つツールであり、都市計画や防災対策、さらには環境保全など多岐にわたる場面で活用されています。

この記事では、GISとは一体何なのか、そしてどのような活用事例があるのかを紹介します。

GISとは

GISとは「Geographic Information System」の略で、日本語では「地理情報システム」と呼ばれています。

我々が生活している現実世界には、多くの「位置」に基づいた情報が存在しています。

例えば、自分が住んでいる町の風景を思い浮かべてみてください。そこには街路樹や街頭、河川や道路、建物や公園などさまざまな「モノ」が存在しているかと思います。

目にみえるもの以外にも、ある地点の気温であったり、都道府県の境界、あるエリアの人口分布、交通事故の発生箇所など位置に紐づいた「事象(コト)」が存在しています。

このように場所や領域に関する「モノ・コト」のことを「地理情報(もしくは地理空間情報)」と呼び、それをコンピュータ上で扱うシステムのことを地理情報システム(GIS)と言います

現実世界の場所に紐づくモノ・コトの事例(編集部作成)
現実世界の場所に紐づくモノ・コトの事例(編集部作成)
GIS上でのモノ・コトの表現(基盤地図情報(国土地理院)、地理院地図Vectorを加工して作成)
GIS上でのモノ・コトの表現(基盤地図情報(国土地理院)、地理院地図Vectorを加工して作成)

GISでできること

情報の可視化

GISではこれらのモノ・コトに紐づいている座標(例えば緯度経度)に基づいてデータを可視化することができます。さまざまなデータを重ね合わせて可視化することで、それぞれのデータの位置関係を視覚的に理解しやすくなり、状況の把握や意思決定に役立たせることが可能になります。

GISでのデータの可視化事例(基盤地図情報(国土地理院)、地理院タイル(国土地理院)、「国勢調査 2020年調査結果」(総務省)、「国土数値情報(土砂災害警戒区域データ)」(国土交通省)、「筆ポリゴンデータ(2021年度公開)」(農林水産省)を加工して作成)
GISでのデータの可視化事例(基盤地図情報(国土地理院)、地理院タイル(国土地理院)、「国勢調査 2020年調査結果」(総務省)、「国土数値情報(土砂災害警戒区域データ)」(国土交通省)、「筆ポリゴンデータ(2021年度公開)」(農林水産省)を加工して作成)

情報の管理

飲食店の地点を例に考えてみると、その場所の住所や緯度経度といった「場所」に関する情報のほかに、和食なのか洋食なのかといった食事の種類、収容人数、喫煙スペースの有無など、お店に関するさまざまな情報があります。他にも、河川であれば河川の名前や幅、水量流域面積など、公園であれば敷地面積や遊具の種類、トイレの有無など、扱うモノ・コトによってさまざまな情報を持っています。

GISではこのようなモノ・コトの場所に紐づいて情報を持たせることができるようになっています。

当然、お店が入れ替わって別のお店になったりするとその場所の情報は変わりますが、GISでは扱う属性を書き換えたり新しい属性を追加したりすることで、その場所と情報を管理することができるようになっています。

地理情報がもつ情報(属性)の例
地理情報がもつ情報(属性)の例

データ解析

GISではデータの属性や位置関係に基づいてさまざまな空間解析を行うことができます。例えば、ある駅から半径500mの範囲にある飲食店を抽出したり、地点と地点の間の距離を計測したり、指定した領域の面積を求めたりすることが簡単に行えます。

以上のように情報の可視化や管理、そして情報を用いた空間的な分析・解析を行うことができることが、GISの大きな特徴になっています。

解析処理の一例(地理院タイルを背景に、基盤地図情報(国土数値情報)を加工して作成)
解析処理の一例(地理院タイルを背景に、基盤地図情報(国土数値情報)を加工して作成)

GISの活用事例

GISはさまざまな分野で活用されていますが、ここではいくつかの例を分野別にご紹介します。

また、ユースケースのページでは分野ごとに詳しく活用事例を解説していますので、併せてこちらのページもご覧ください。

交通・都市計画

交通網やインフラなどの開発計画において、土地の所有者や利用用途、地価などの情報を管理して、人口密度、交通量、などとも重ねて視覚化・分析することで、効果的な都市計画の設計や計画をすることが可能になっています。

交通データの可視化(地理院タイルを背景に、GTFSデータ(十勝バス)を加工して作成)
交通データの可視化(地理院タイルを背景に、GTFSデータ(十勝バス)を加工して作成)

防災

地形データや洪水・津波による浸水想定区域などの災害情報を重ね合わせた上で、そこに位置する住宅などのリスク評価や避難計策の策定、ハザードマップの作成や防災訓練に活用されています。

ハザードマップの例(地理院タイルを背景に、「国土数値情報(津波浸水想定データ)」(国土交通省)を加工して作成)
ハザードマップの例(地理院タイルを背景に、「国土数値情報(津波浸水想定データ)」(国土交通省)を加工して作成)

環境保全・環境調査

生態系のモニタリングにおいて、土地利用の変化や森林伐採の状況を追跡し、生態系に与える影響を監視・分析することが可能です。また、保護区域の設定や管理計画を立案する際の基礎資料としても役立てられています。

環境調査のための植生マップ(地理院タイルを背景に、第5回自然環境保全基礎調査植生調査結果(環境省生物多様性センター)を加工して作成)
環境調査のための植生マップ(地理院タイルを背景に、第5回自然環境保全基礎調査植生調査結果(環境省生物多様性センター)を加工して作成)

農業

土壌データや気象データと農地ごとの作物情報を統合し、どのエリアでどのような作物を育てるのに最適であるのかであったり、施肥や手入れが必要な箇所を特定したりと農地の管理に活用されています。

農地の管理用マップ (「筆ポリゴンデータ(2021年度公開)」(農林水産省)を加工して作成)
農地の管理用マップ (「筆ポリゴンデータ(2021年度公開)」(農林水産省)を加工して作成)

医療・公衆衛生

病気や感染症の拡大状況の把握などに利用されています。例えば、感染者の分布を地図上にプロットし、拡散のパターンを分析することで、予防対策の計画や、効果的なリソース配分の意思決定を行うことができます。

患者発生状況の可視化例(地理院タイルを背景に編集図にて作成したダミーデータで表示)
患者発生状況の可視化例(地理院タイルを背景に編集図にて作成したダミーデータで表示)

人口・生活

犯罪や交通事故の発生箇所を地図上にプロットし、特に事故や事件の件数が多い箇所の重点的な警戒や改善案の提示などが可能になります。

地区ごとの世帯数分布の可視化 (地理院タイルを背景に、「国勢調査 2020年調査結果」(総務省)を加工して作成)
地区ごとの世帯数分布の可視化 (地理院タイルを背景に、「国勢調査 2020年調査結果」(総務省)を加工して作成)

GISソフト

GISソフトウェアは有償・無償に関わらずさまざまなソフトが存在しています。代表的なものをいくつかご紹介いたします。

ArcGIS

Esri社が開発した有償ソフトウェアでは最も有名なものがArcGISシリーズです。

デスクトップソフトウェアであるArcGIS Proや、オンラインブラウザ上で操作する ArcGIS onlineなどさまざまなバージョンで提供されております。高度な空間分析機能やビジュアライゼーションが可能となっており、多くの政府機関や企業、学校などで導入されております。

ArcGISのウェブサイト(出典:https://www.esrij.com/products/arcgis-pro/)
ArcGISのウェブサイト(出典:https://www.esrij.com/products/arcgis-pro/

QGIS

無償で使用できるGISソフトで最も有名なのがQGIS( Quantum GIS)です。

オープンソースソフトウェアであるため、コミュニティによる開発やメンテナンスが行われています。他のオープンソースソフトウェアのGISと比べても安定して動作することや、WindowsやMac、Linuxなどマルチプラットフォームで動作することもあり、全世界でユーザー数を伸ばしています。多くの解析機能が備わっている上に、プラグインによってさらに多様なツールを実行することが可能となっています。また、ユーザー自身によってプラグインを開発・公開することも可能です。

QGISのウェブサイト(出典:https://www.qgis.org/)
QGISのウェブサイト(出典:https://www.qgis.org/
QGISの操作画面(基盤地図情報(国土地理院)、地理院地図Vectorを加工して作成)
QGISの操作画面(基盤地図情報(国土地理院)、地理院地図Vectorを加工して作成)

GRASS GIS

QGISと同様にオープンソースのGISソフトウェアで、特に地形解析に関する処理に強い特徴を持ちます。非常に高度な地理空間データの管理、解析、モデリング機能を備えており、研究機関や環境解析分野で広く利用されています。

GRASS GISのウェブサイト(出典:https://grass.osgeo.org/)
GRASS GISのウェブサイト(出典:https://grass.osgeo.org/
GRASS GISのユーザーインターフェイス(出典:https://grass.osgeo.org/learn/gallery/)
GRASS GISのユーザーインターフェイス(出典:https://grass.osgeo.org/learn/gallery/

おわりに

GISは、単に地図を表示するだけでなく、場所に関連する情報を視覚化し、管理・解析する強力なツールです。GISを取り入れることで、より多角的な視点を持って状況を理解することができるでしょう。

この記事を書いた人
QGIS LAB編集部
QGIS LAB編集部

QGIS LABは、オープンソースのGISソフトウェア「QGIS」に関する総合情報メディアです。「位置と情報で世界を変える」をコンセプトに、位置情報で世界を拓くための知識と技術をお届けします。

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