GISデータについて知ろう!ベクタデータとラスタデータの違いを解説
この記事でわかること
- ベクタデータ(ベクトルデータ)とラスタデータについて
- GISデータのファイル形式について
- ベクタデータとラスタデータの使い分け
こんな人におすすめ
- これからGISを始める方
- GISで扱うデータについて知りたい方
はじめに
この記事では、GIS初心者向けに、GISで活用されるデータの種類であるベクタデータとラスタデータについて、またデータ形式の違いについて紹介します。
ベクタデータとラスタデータ
GISで扱うデータは、大きく「ベクタデータ」と「ラスタデータ」に分けられます。
ベクタデータは、点・線・面といった形状を頂点の座標で表現したデータです。一方で、ラスタデータは格子状に並んだピクセルによって表現されるデータになります。
以下では、それぞれのデータについてもう少し詳しく説明していきます。
ベクタデータとは
地理空間情報を点(ポイント)、線(ライン)、面(ポリゴン)といった形状で表現したものをベクタデータ(もしくはベクトルデータ)と呼びます。ベクタデータの形状は、以下の3つに分類することができます。
点(ポイント)
地理空間における特定の位置を示す最も基本的なジオメトリです。点は2次元空間(x,y)または3次元空間(x,y,z)といった座標で示され、空間的な広がりや距離を持たずに特定の1地点を示します。
例えば、交差点や街路樹、電柱、店舗の場所など、特定の地点を示す際には点で表現されます。
線(ライン、ポリライン、ラインストリング)
2つ以上の点を結んだ形状のジオメトリであり、複数の頂点(ポイント)を連結することで構成します。始点と終点が存在しており、長さを持ちます。
例えば、線路や道路、河川、電線など、一定のつながりを持った状態を示す際には線で表現されます。
面(ポリゴン)
頂点を結ぶラインが閉じた形状のジオメトリを指します。最低でも3点の頂点を持ち、始点と終点は同じ点で閉じています。ポリゴンは特定の領域を表現するもので、面積を持ちます。
例えば、土地の区画や建物・湖・池などの形状、市町村の範囲など、一定の広がりを持つものを示す際には面で表現されます。
同じ地理空間情報でも、点、線、面のどれを使って示すかは目的に応じて変わります。
例えば、建物を示す際に建物形状をポリゴンで示す場合と、建物の場所をポイントとして示す場合が考えられます。
ポリゴンデータでは建物の敷地面積を求めたり領域内に含まれる情報の抽出など面的な解析が可能です。ポイントデータではルート検索の始点・終点としての活用やその地点間同士の解析(ボロノイ分割など)などが可能になります。
このように、どのように表現したいのか、どのような解析をしたいのかなど、目的に合わせて使用するデータを決めることになります。
ベクタデータにおける属性
ベクタデータは、それぞれの地物に対して属性(情報)を持たせることができる点が特徴です。
例えば、ある建物の属性には、建物名や住所、階数といったものがあります。GISにおける属性は必要に応じて更新したり、項目を増やしたりすることができます。
これによってGIS上では特定の地物についての情報を地図上の位置と合わせて管理、検索、解析することが可能になっています。
GISソフト上では属性テーブル上から確認することができるようになっています。
ラスタデータとは
ラスターデータは、格子状に並んだピクセルで構成されているデータです。
地図を拡大すると格子の状態が確認できるのもラスタデータの特徴であり、1つ1つのピクセルの大きさをピクセルサイズもしくは解像度と言います。もちろんピクセルサイズは小さいほど細かな情報を表現することができますが、その分データ量も大きくなります。
ラスタデータは、航空写真や衛星データのような画像データ、標高値のような連続的な値のデータを示す際に活用されています。広範囲を表現する場合であっても、ベクタデータに比べてデータ容量が抑えられるため、ベースマップなどに活用される場合も多く見られます。
ラスタデータにおける属性
ラスタデータでは各ピクセルに属性(値)が格納されています。
ラスタデータがもつ属性は標高値のような実数値の場合もあれば、例えば土地利用のように人工地が「10」、水域は「50」という具合に情報をコード化した数値が格納されている場合もあります。そのほか航空写真や衛星画像などはピクセル値としてRGBの値が格納されています。
GISではそのピクセルの値に応じて色を配色することで地図上にカラーで表現しています。
ファイル形式について
ベクタデータのファイル形式
ベクタデータには、地理情報システム(GIS)で利用される際にいくつかの異なるファイル形式が存在します。
これらのファイル形式は、使用目的やデータの種類、ソフトウェアの互換性に応じて使い分けられます。ここでは、代表的なベクタデータのファイル形式をいくつか紹介します。
シェープファイル(拡張子は.shp、.dbf、.shxなど)
Esri社によって提唱されたGISを代表するデータフォーマットです。複数のファイルで構成されており、必要なファイルが揃っていないと正常にデータを開くことができません。
以下はシェープファイルを構成する主なファイルです。
拡張子 | 説明 | 必須かどうか |
---|---|---|
.shp | 地理的な形状(ジオメトリ)を保存するメインのファイル。ポイント、ライン、ポリゴンといった図形情報が含まれる。 | 必須 |
.shx | シェープインデックスファイル。 | 必須 |
.dbf | 属性データを保存するファイル。dBASE形式で、各ジオメトリに関連する属性情報が格納される。 | 必須 |
.prj | 座標参照系(CRS)に関する情報を保存するファイル。 | オプション |
.cpg | 属性データの文字コード(エンコーディング)を定義するファイル。 | オプション |
.shp
ファイルにはジオメトリ情報が、.dbf
ファイルには属性情報が記録されており、.shx
ファイルは両ファイルを紐づける役割を持っています。そのほか.prj
ファイルには座標系の情報が記録されています。
これによって効率よくデータを読み込んだり編集したりすることができますが、ファイルの管理が煩わしくなったり、ファイルサイズや属性のフィールド名に制限があるなどのデメリットもあります。
これらのファイルは同じフォルダに格納されていることで、シェープファイルとして一つのデータとして機能します。QGISへ追加する際には、同じフォルダにこれらのデータを入れた上で、.shp
ファイルのみを読み込むことで追加することができます。
シェープファイルを正しく扱うためには、少なくとも.shp
、.shx
、.dbf
の3つのファイルが必須となっているため注意が必要です。
GeoJSON(拡張子は.geojson)
JSON形式をもとにしたファイル形式であり軽量で可読性が高いため、webシステムとの連携もしやすいファイル形式です。ただし大量のデータ数では処理が遅くなります。
GeoPackage(拡張子は.gpkg)
OGC(Open Geospatioal Consortium)が標準化したオープンなGISデータ形式で、ベクタデータ以外にもラスタデータも格納することができるファイルになっています。
そのため、データの管理がしやすく、ファイルサイズも効率的に圧縮されパフォーマンスに優れています。一方で、比較的新しいファイル形式であることから、古いGISソフトなどでは対応していない場合があります。
ラスタデータのファイル形式
ラスタデータは、.tif
(TIFF画像)や.png
(PNG画像)、.jpg
(JPG画像)と言うように、一般的な画像ファイルとして存在しています。格子状に値が格納されている点で言うと「位置情報を持った画像ファイル」と捉えることができます。
一方で、位置情報を持っていない画像をGISに読み込んでも正しい場所に表示されません。位置情報を持っていない画像ファイルに位置情報を与えることができます。その処理のことを「ジオリファレンス」と言います。
一部の画像ファイルは、位置情報をヘッダー情報として画像ファイルに書き込むことができますが、画像ファイルによっては、別ファイルに位置情報が記録されるものもあります。
まとめ
GISデータにはベクタデータとラスタデータが存在しており、ベクタデータは点・線・面といった形状で表現されるもの、ラスタデータは画像のように格子状に数値が格納されているデータのことを示します。
それぞれのファイル形式はベクタデータではシェープファイルやGeoJSON、GeoPackageなど、ラスタデータではTIFFやPNG画像ファイルがあります。