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世界のQGISユーザーが広島に集結!「FOSS4G Hiroshima 2026」QGISセッションレポート

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この記事でわかること


  • FOSS4G Hiroshima 2026におけるQGIS関連セッションの全体像
  • コミュニティ・エコシステム・実務活用・教育など、各セッションの内容

こんな人におすすめ


  • 世界のQGISコミュニティの最新動向に関心のある方
  • FOSS4GイベントにおけるQGISの発表内容を知りたい方

はじめに

FOSS4G Hiroshima 2026」は、地理空間技術のオープンソースソフトウェア(FOSS4G)に関わる人々が世界中から集う国際カンファレンスです。2026年9月、広島県で開催されました。日本でのFOSS4Gグローバルカンファレンスの開催は初となります。

この記事では、筆者の久納が現地で聴講したセッションの中から、QGISに関連する発表をテーマごとにピックアップしてレポートします。

QGIS関連セッションが盛りだくさん!

今回のFOSS4G Hiroshima 2026では、タイトルに「QGIS」「QField」を含むトークだけでも20件以上、発表概要でQGISに言及したものを含めるとさらに多くのセッションが行われました。世界最大級のFOSS4Gイベントにふさわしく、開発・コミュニティ・実務活用・教育と、あらゆる角度からQGISが語られる3日間でした。

以下に、QGIS関連の主なトークをリンク付きでご紹介します。以下に、筆者が確認できた範囲で、QGIS関連の主なトークをリンク付きでご紹介します。

Day1(9月1日)

Day2(9月2日)

Day3(9月3日)

ここからは、筆者が聴講したQGISに関連するセッションをテーマごとにご紹介します。

QGISコミュニティとローカライズ事情

QGISの強みのひとつは、世界中のコミュニティが自分たちの言語で使える環境を作り上げてきたことです。今回は、そのコミュニティとローカライズをめぐる発表が数多くありました。

Bridging the Language Gap: How the QGIS Brazil Community Drives Open Source Adoption in the Global South

Narcélio de Sáさんによる発表の様子
Narcélio de Sáさんによる発表の様子

こちらは、ブラジルのQGISコミュニティを牽引するNarcélio de Sáさんによる発表です。

ブラジルで英語を話せる人は人口の5%、流暢に話せる人は1%にすぎません。ソフトウェアのメニューが読めなければ、そもそも使うことができないため、言語の壁はツール普及における根本的な障壁です。

QGISブラジルコミュニティは世界でも歴史あるQGISコミュニティのひとつで、その出発点は翻訳活動でした。大学で学生から「ポルトガル語のQGISがほしい」という声が相次いだことをきっかけに翻訳が始まり、その作業を通じて小さなグループが生まれ、やがて大きなコミュニティへと成長したそうです。現在ブラジルは、QGISの利用が世界で最も活発な国のひとつとなり、単なる安価な代替GISソフトウェアではなく標準ツールとして定着しています。

ブラジルのQGISコミュニティの事例が示す「ソフトウェアを翻訳することは、コミュニティを創ることである」というメッセージが、特に印象的でした。

Scaling Geospatial Communities: 16 Years of QGIS Brazil and the Path to LATAM 2024

Narcélio de Sáさんによる発表の様子
Narcélio de Sáさんによる発表の様子

同じくNarcélio de Sáさんによる発表で、QGISブラジルコミュニティの16年間の歩みが紹介されました。

活動は2005年、大学での翻訳作業から始まり、2010年に公式ポータルサイトを開設して「QGIS Brasil」として正式にコミュニティが発足しました。国土が広いブラジルではメンバーが直接顔を合わせることが難しいため、FacebookやYouTube、Googleグループ、Telegram、WhatsAppなどを活用したオンラインでの交流を運営の主軸に置いてきたそうです。現在ではFacebookグループに35,000人以上、Googleグループに5,000人のメンバーが参加し、コミュニティサイトへのアクセスは30万回を超えるなど、オンラインを軸とした活発な交流が続いています。

2014年には初めてのQGIS利用実態調査とユーザーカンファレンスを実施。2024年には「QGIS LATAM Meeting」をブラジルで主催し、メキシコからチリまで、ラテンアメリカ各国から参加者が集まるイベントとなりました。

新しくコミュニティを立ち上げる人に向けた「ドキュメント整備とローカライズから始める」「オンラインのネットワークを軸に据える」という提言は、日本のコミュニティにとっても示唆に富む内容でした。

Current status and challenges of FOSS4G's Japanese localization

Kayamaさんによる発表の様子
Kayamaさんによる発表の様子

こちらは、長年日本のFOSS4Gローカライズを支えてきたYoichi Kayamaさんによる発表です。

明治期の「お雇い外国人」や和製漢語まで遡り、日本におけるローカライズの歴史から話が始まりました。現状については、OSGeo.orgに掲載されている59のFOSS4Gプロジェクトのうち、日本語ローカライズがあるのはQGISやGRASS、PostGISなど9プロジェクトのみで、少数の担い手に支えられている実態が紹介されました。Kayamaさんご自身も、2008年からQGISデスクトップの日本語化に長年取り組んできたそうです。

近年の動きとしては、フレームワークをHugoに移行したQGIS公式サイトでは2026年に多言語対応が導入され、日本語の翻訳率が35%を超えたことで、サイトの表示言語として日本語を選択できるようになったことも紹介されました。QGISには多くの翻訳貢献者がいる一方で作業が個人化しており、翻訳内容をレビュー・議論できる場が必要である、という課題提起で締めくくられました。

QGIS in Your Language

Uemoriさんによる発表の様子
Uemoriさんによる発表の様子

こちらは、MIERUNEのKeita Uemoriさんによる発表です。当サイト「QGIS LAB」の取り組みを世界に向けて紹介しました。

日本にはすでに日本語UI・公式ドキュメント・書籍・ブログなど豊富なリソースがありましたが、それらは複数のバージョンと多数のサイトに分散しており、初心者が「どのページが自分のバージョンに合うのか」「何から学べばいいのか」を判断するのは困難でした。QGIS LABは既存リソースを置き換えるのではなく、「整理・ローカライズ・最新状態の維持」の3つの役割を担うことを目指しています。

日本語UIのスクリーンショットと日本のオープンデータを組み合わせた「1記事1タスク」のガイド、記事をテーマごとに分類し学習順にまとめた学習パッケージ、テストとダブルチェックによる品質維持など、運営の裏側も具体的に共有しました。最後に「あなたの言語の新規ユーザーは、QGISを開いてからローカルデータで実用的な作業を行うまでの明確な道筋を見つけられますか?」という問いを各言語コミュニティへ投げかけました。

A Japanese Company's Journey in Building the QGIS Community

筆者による発表の様子
筆者による発表の様子

筆者も、日本企業としてQGISコミュニティを育ててきたMIERUNEの歩みについて発表しました。

MIERUNEは2016年の創業以来QGISの公式スポンサーを続けており、研修・サポート・QGIS LAB・OSSプラグインやKumoyの開発という4つの活動を通じて、コミュニティとビジネスの両輪でQGISに関わってきました。発表では、この10年で学んだこととして、QGISを使い始めてから組織での定着までの道のりは長く、その各ステップを支えることが企業の役割であること、無料の知識共有が信頼につながり、それがビジネスとなって再びコミュニティへの投資に還る「持続可能な循環」を回せること、そしてローカライズの重要性をお話ししました。

海外のQGISコミュニティ関係者から質問や共感の声をいただけたことは、大きな収穫でした。

QGISエコシステムの最前線

QGIS本体だけでなく、フィールド収集からクラウド、プラグイン、Web公開までを支えるエコシステムの進化も、今回の大きな見どころでした。

Mapping the World, Empowering People with QField

Marco BernasocchiさんによるQFieldの発表の様子
Marco BernasocchiさんによるQFieldの発表の様子

こちらは、OPENGIS.chのMarco Bernasocchiさんによる発表です。

QFieldの原点は2011年、Marcoさんが大学在学中にGoogle Summer of CodeでQGISのAndroid対応に取り組んだことでした。現在では月間アクティブユーザー50万人、Androidだけで150万件以上ダウンロードされるモバイルGISへと成長しています

FOSS4Gの直前にQField4 .3がリリースされたばかりで、ここ最近では3Dモードの導入、プロジェクトテンプレートなど機能拡充が続いています。活用事例も多彩で、フィンランドでの政府系業務のオープンソース移行、ニュージーランドでの外来哺乳類根絶プロジェクト、ドイツ考古学研究所の文化遺産保護、コスタリカの全国的な廃水管理など、世界中の現場でQFieldが使われている様子が紹介されました。

QFieldについては、QGIS LABでも使い方などに関する記事を公開しています。

QGIS Hub: The Community Resource Ecosystem You Might Not Know About

Ismail Sunniさんによる発表の様子
Ismail Sunniさんによる発表の様子

こちらは、Ismail Sunniさんによる発表です。

QGISユーザーはそれぞれスタイルやスクリプト、モデルを作っていますが、これらはGitリポジトリなど各所に分散しており、「探している人」と「持っている人」が出会えないという課題がありました。QGIS Hubは、スタイル、3Dモデル、モデル、プロジェクトテンプレートなどをコミュニティで共有できるWebポータルです。

さらにQGIS Hub Pluginを使えば、ブラウザを開くことなくQGIS内から直接リソースを検索・プレビューでき、ワンクリックでプロジェクトに追加できます。デモでは、ユニークなカラーパレットのスタイルを追加すると、そのままスタイルマネージャーに反映される様子が示されました。

Kumoy: Turn your QGIS Maps into Cloud-Native

Raymond Layさんによる発表の様子
Raymond Layさんによる発表の様子

こちらは、MIERUNEのRaymond Layさんによる発表です。MIERUNEが2026年4月にリリースしたクラウドGISサービス「Kumoy」を紹介しました。

Kumoyは、QGISプロジェクトをクラウドへつなぐWebサービスです。コードもサーバーも不要で、QGISで作った地図を数クリックでインタラクティブなWebマップとして公開でき、レイヤのスタイルはそのまま保持されます。

Kumoyのもうひとつの柱がクラウドでのデータ共有機能です。GISデータをクラウドに集約し、どのデバイスからでも同じQGISプロジェクトを開いて、スタイルとデータを同期しながらチームでリアルタイムに共同編集できます。閲覧者・編集者・管理者といったロールによるアクセス管理にも対応しています。

また、発表の最後には、会期中の朝ランイベント「FOSS4Run」の走行ログをKumoyで公開したマップも披露され、会場を沸かせました。

現場でのQGISの実践・活用

QGISが実務の中でどう使われ、どんな課題に向き合っているのか。日本の現場からの発表も充実していました。

Quality Control Leveraging the Characteristics of Proprietary and Open-Source GIS

Uenoさんによる発表の様子
Uenoさんによる発表の様子

こちらは、株式会社SOCOのMisako Uenoさんによる発表です。

データ製作側はQGIS、クライアントはArcGISで品質管理を行っていたところ、同一データに対して異なるトポロジー検証結果が出てしまった、というプロジェクトでの経験が出発点です。検証実験では、ラインの端点間に0.5mmのギャップがあるデータに対し、QGISは「接続なし」、ArcGISは「接続あり」と判定が分かれました。原因は設計思想の違いで、QGISは座標値を厳密に比較する一方、ArcGISはデフォルトで一定の許容値を持っているため、その範囲内の2点を同一座標として扱うためです。

発表者は「どちらの設計も欠陥ではない」としたうえで、「品質はデータだけでなく、検証に使うツールにも依存する」とし、再発防止策として、許容値を数値で仕様書に明記すること、検証手法とツール設定を発注者・受注者間で統一すること、成果物に使用ツール・バージョン・許容値を記録するといった提言がありました。

Participatory Renewable Energy Zoning Using QGIS and Open Data: A Case Study in Urahoro, Hokkaido

Shota Furuyaさんによる発表の様子
Shota Furuyaさんによる発表の様子

こちらは、Shota Furuyaさんによる発表です。北海道浦幌町における再生可能エネルギーゾーニングの事例が紹介されました。

ゼロカーボンシティを宣言した浦幌町で、将来の開発をめぐる紛争を避けるため、保全区域・調整区域・促進区域を定めるゾーニングに取り組んだ事例です。住民向けのセミナーやワークショップなどを重ねながら進められ、その議論の土台となる地図づくりにQGISが使われました。

発表者はGIS経験がほぼゼロの状態から、AIへの質問とQGIS LABの記事を参照しながらスキルを習得し、国土数値情報のオープンデータを中心に多数のレイヤーを統合して分析をやり遂げたそうです。住民との対話と、オープンなツール・データを組み合わせた、地域主体のゾーニングの好例だと感じました(運営者としては、QGIS LABが役に立ったと聞けて、とても嬉しい発表でした)。

教育と人材育成

QGISを「使う」だけでなく「教える」ことに焦点を当てたセッションも印象的でした。

Training without Barriers: Lessons for Building Geospatial Capacity

Seabilwe Pontso Leah Tilodiさんによる発表の様子
Seabilwe Pontso Leah Tilodiさんによる発表の様子

こちらは、Kartozaでトレーニング部門を率いるSeabilwe Pontso Leah Tilodiさんによる発表です。

GISのトレーナーの多くは、正式に教え方を学ばないまま教える側になった「偶発的なトレーナー」であり、ツールを説明できることと教えられることは別のスキルである、という問題提起から始まりました。ツール操作から教えてしまうと、受講者はクリック手順は繰り返せても、スキルとして応用できない状態になってしまうため、座標参照系やラスタ・ベクタといった基礎概念から土台を積み上げ、ツールは最後に教える必要があるという言葉が印象的でした。

実践策として、事前アンケートで受講者の基礎知識を把握して教材を調整すること、専門外の分野のトレーニングでは、「どんな意思決定をしたいか」「現在のワークフローはどうなっているか」「完了した状態はどうか」の3つを問うこと、また、多様な受講者(初心者、分析担当者、経営層、参加を強制された人)それぞれへの向き合い方などが、豊富な失敗談とともに共有されました。「うまくいかなかったトレーニングのほぼすべては、事前のスコープの確認でつまずいていた」という言葉は、QGIS研修に携わる筆者にも刺さる内容でした。

Implementation and evaluation of geography education using QGIS for Japanese high school students

Hiroyuki Yamauchiさんによる発表の様子
Hiroyuki Yamauchiさんによる発表の様子

こちらは、立命館大学のHiroyuki Yamauchiさんらによる、中高生向けGIS教育の効果を検証した研究発表です。

2022年度から高校で必修化された「地理総合」でGIS・地図の活用が重視されていることを背景に、2018年から2025年にかけて中高生向けの教育イベントを計8回開催し、延べ210名が参加したQGIS演習の効果を課題とアンケートで分析しました。演習では、地形と土地利用の関係を学ぶ典型例として知られる山梨県の京戸川扇状地を題材に、DEMの取り込みと色分け、傾斜・陰影起伏・等高線の作成、土地利用データとの重ね合わせまでを、生徒一人ひとりがQGISを操作しながら学びます。

結果として、GISデータの概念と操作手順の理解を問う課題の正答率は86.2%と高く、学年を問わず大多数の生徒が空間データの概念を理解できたようです。一方、複数レイヤーから地理的特徴を読み取る課題の正答率は47.3%にとどまり、高校2・3年生では75%以上が正答したのに対し、低学年では3〜4割程度と学年差が明確に表れました。QGISを使った地理教育は中高生にも十分実施可能である一方、地図読解教育の強化や、PCスキル・学習ペースの個人差に応じた指導の工夫が今後の課題として示されました。

番外編:QGIS日本コミュニティ活動検討会

QGIS日本コミュニティ活動検討会の様子
QGIS日本コミュニティ活動検討会の様子

カンファレンス翌日の9月4日には、QGIS日本コミュニティ活動検討会が開催されました。翻訳、情報共有、イベント開催など、日本のQGISコミュニティの今後について議論する場です。

議論の中では、QGIS公式サイトで翻訳率が35%を下回ると日本語を選択できなくなる問題や、翻訳者とは別にレビュー担当を置く必要性、翻訳ガイドラインの整理・共有、QGIS日本コミュニティの立ち上げなどが話し合われました。

2026年10月末に予定されているQGIS 4.4のリリースを契機としてイベントを開催する案も出るなど、FOSS4Gの熱気を日本のコミュニティ活動へつなげる前向きな一歩となりました。

検討結果の詳細はGitHubで公開されており、誰でも閲覧できます。

おわりに

FOSS4G Hiroshima 2026では、開発者やコミュニティ運営者、実務者、研究者などが一堂に会し、QGISをはじめFOSS4Gをめぐる世界の今を肌で感じることができました。ブラジルの翻訳から始まったコミュニティの物語、QFieldをはじめとするエコシステムの進化、日本の現場での実践、そして教育への広がりなど、それぞれの立場は違っても、「QGISをもっと使いやすく、もっと多くの人へ」という想いは世界共通だと実感したイベントでした。

日本のQGISコミュニティも、新しい体制づくりに向けて動き始めています。QGISをはじめとするFOSS4Gに興味をお持ちの方は、ぜひコミュニティやイベントに参加してみてください!

この記事を書いた人
MIERUNE Inc. 久納 敏矢
MIERUNE Inc. 久納 敏矢

前職の不動産鑑定士事務所でSISを扱ったことをきっかけにGISを知り、その面白さに惹かれてQGISに出会う。その後、GISエンジニアとしてMIERUNEに転職し、現在はQGISチームで、QGIS研修や技術サポート、当サイトの運営などを担当。

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