QGISの活用事例も満載!FOSS4G 2024 Japan イベントレポート
この記事でわかること
- FOSS4G 2024 Japanのイベント概要
- QGISに関するセッションやハンズオンの詳細
- 最新のGIS技術やプラグインの開発事例
こんな人におすすめ
- FOSS4Gイベントの雰囲気を知りたい方
- QGISを活用した最新事例を知りたい方
はじめに
2024年11月9日から10日にかけて、地理空間技術のオープンソースコミュニティ(FOSS4G)が集結するイベント「FOSS4G 2024 Japan」が、専修大学生田キャンパスで開催されました。このイベントは一般社団法人OSGeo日本支部(OSGeo.JP)の主催で、地理空間情報システム(GIS)をはじめとするオープンソース技術の最新動向を共有する場として、毎年多くの開発者、ユーザー、研究者が参加しています。
ハンズオンデイ
1日目はハンズオンデイとして、FOSS4Gツールに関するハンズオンが複数開催されました。
QGISに関しては、OSGeo日本支部の勝部さんより「はじめてのQGIS」というテーマで初心者を対象としてGISを利用する上での基礎知識やQGISの基本的な操作に関するハンズオンが行われました。
また、MIERUNEの上森さんからは「QGISを使って3D都市モデル(PLATEAU)で遊ぼう!」というテーマで、神奈川県川崎市の3D都市モデルをPLATEAU QGIS Pluginを使ってQGISに取り込み、属性に応じたスタイリングや3D表示といった基本的な操作から、マップ上に3Dモデルを配置しARで表示する応用的な操作方法に関するハンズオンが行われました。
そのほかにも、CesiumやMapLibre GL JSといったWebGISに関するハンズオンなど、計6個のハンズオンが開催されましたが、すべて満席になるほどの盛況ぶりでした。
コアデイ
2日目はコアデイとして、FOSS4Gユーザーによる講演、事例紹介、パネルディスカッションなどのさまざまなセッションが行われました。今回は、4会場に渡って同時にセッションが行われ、約40個もの発表が行われました。
その中で、QGISに関する発表をいくつか紹介します。
QGISで実現するもっと分かりやすい森林ゾーニング
まずは、一般社団法人日本森林技術協会の大萱さんとMIERUNEの曲さんによる「QGISで実現するもっと分かりやすい森林ゾーニング」というテーマでの共同発表です。
森林分野では、持続可能な資源活用や災害リスク軽減の観点から、木材生産を主とするエリアと災害リスクや環境保全が求められるエリアを分ける「ゾーニング」が必要とされています。しかし、これをGISで実現するには高度なラスタ解析が求められ、行政や林業事業者にとって大きなハードルとなっていました。この課題に対応するため、林野庁の委託事業として開発されたのがQGISプラグイン「もりぞん」です。
発表では、「もりぞん」の開発において、森林分野の専門家と技術者がどのように協力し、実用的なツールを完成させたのかが詳しく紹介されました。また、技術的な詳細として、ラスタ解析を効率化する機能や、簡便に閾値を設定できる仕組みなど、ゾーニング作業を支援する工夫について解説がありました。
「もりぞん」はG空間情報センターから無料でダウンロードでき、誰でも利用可能となっています。このツールを通じて、より多くの現場で効率的かつ効果的な森林管理が進むことが期待されています。
MIERUNEとQGIS、そしてQGIS事業のご紹介
続いて紹介するのは、MIERUNEの朝日さんによる「MIERUNEとQGIS、そしてQGIS事業のご紹介」です。
MIERUNEは「QGISのMIERUNE」を掲げ、QGISを基盤としたソリューション提供に取り組んでいますが、単なる利用にとどまらず、ソースコードへの貢献や寄付、講習会開催などを通じ、QGISエコシステムの発展と利用促進にも力を注いでいます。
今回の発表では、本年度から本格化した「QGIS事業」の取り組みや、当サイト「QGIS LAB by MIERUNE」の立ち上げ、そして今後の展望について紹介されました。
農業リモートセンシングにおけるQGISの活用 - RTK測位技術を組み合わせて
次は、北海道の農業団体であるホクレン農業協同組合連合会の山本さんによる「農業リモートセンシングにおけるQGISの活用 - RTK測位技術を組み合わせて」という発表です。
ホクレン農業協同組合連合会では、農業現場の課題解決に向けて、QGISやQFieldを活用した農作物のリモートセンシングに取り組んでいます。具体的には、衛星データやドローン、RTK測位技術を活用し、小麦の病害発生エリアの算出や生育調査を行っています。特に、RTK測位による高精度な位置データとドローン撮影データを組み合わせることで、効率的かつ正確な分析を実現している事例が紹介されました。
農業とGISの相性の良さが改めて示される発表となり、今後さらにQGISの活用が進むことが期待されます。
ハザードマップゲームの作り方 - QGISプラグインでパラメーターを生成
最後に紹介するのは、MIERUNEのLayさんによる「ハザードマップゲームの作り方 - QGISプラグインでパラメーターを生成」についての発表です。
東京カートグラフィック株式会社とMIERUNEは、地図を活用した防災ゲーム「守れ!サイガイ防衛隊」を共同で開発しています。このゲームで使用されているデータは、専用のQGISプラグインで生成されており、発表ではその技術的な仕組みについて詳しく紹介がありました。プラグインは、国土数値情報の災害関連データといった各種オープンデータを利用し、メッシュ単位で災害リスクを特定のルールに基づいて計算する機能を備えています。
ゲームにGIS技術が活用されることはありますが、ゲームデータの生成にQGISを用いるのは興味深い試みではないでしょうか。このプラグインは、オープンソースとして公開が予定されているとのことです。
おわりに
FOSS4G 2024 Japanでは、地理空間分野におけるオープンソース技術の最前線を体感し、多くの有益な情報を共有する機会となりました。イベントを通じて、QGISをはじめとするツールやプロジェクトがどのように実社会で活用され、課題解決に役立てられているのか、その可能性を改めて実感することができる場となりました。
なお、FOSS4G Japanは来年度も日本のどこかで開催予定とのことです。まだ参加経験のないQGISユーザーにとって、新たな知識やスキルを習得するだけでなく、コミュニティとのつながりを深める絶好のチャンスとなるでしょう。