FOSS4G Auckland 2025で最近の技術トレンドを知ったり、いろんな人に会ってきました
この記事でわかること
- FOSS4G Auckland 2025のイベント概要
- QGISに関するセッションやハンズオンの詳細
こんな人におすすめ
- 海外FOSS4Gイベントの雰囲気を知りたい方
はじめに
みなさん、こんにちは。
MIERUNEでEngineering Managerをしている山﨑です。
近年(2025年)、日本の各地域でFOSS4Gイベントが精力的に開催されていますね。
今年度だと九州から北海道まで合計5つの国内FOSS4Gイベントが開催されていることになります。
FOSS4Gイベントは、FOSS4G(地理空間情報のためのフリー・オープンソースソフトウェア)の技術の紹介や、活用した事例の発表、参加者同士の交流ができるイベントです。

もちろん世界各地でもFOSS4Gイベントは開催されているわけですが、ワールドクラスで毎年1回開催されているFOSS4Gイベントがあり、我々はそのイベントをFOSS4G Globalと呼んでいます。
このFOSS4G Globalですが、2025年度はニュージーランドのオークランドで開催されました。
そして、今回所属する会社から機会をいただきFOSS4G Auckland 2025に参加および登壇しに行くことができました。

FOSS4G Auckland 2025は5日間+αの長いイベントで、QGISに関するワークショップやセッションが多く発表されていました。

QGIS LABという媒体で報告することを考えると、QGISに関連する情報を多く共有できると良かったのですが、QGISとそれに関連する技術以外にも、実に多様なFOSS4Gの情報に興味をひかれ、それらの発表を聞きがちでした。
QGIS関連でお伝えできる情報は少ないですが、とても楽しくモチベーションの上がるイベントでしたので、このイベントの様子を伝えさせてもらいます。
FOSS4G Auckland 2025の概要
FOSS4G Auckland 2025の開催期間は2025年11月17〜23日で以下のイベントスケジュールで開催されました。
大きく分けると3部構成で、前半にワークショップがあり、後半でメインイベントであるカンファレンスで多くのセッション発表があります。そして最後に参加者はグッと減りますが、Community Events and Code Sprintsが開催されます。

MIERUNEからは私を含めて3名でこのイベントに参加しました。11月14日(金)に成田空港を出発し、11月24日(月)にオークランド国際空港から成田空港に帰ってくるスケジュールで行動しました。
会場はオークランドにあるオークランド工科大学(Auckland University of Technology)で、海に歩いていける綺麗で素敵な会場でした。

建物の中は大学ということもあって、オシャレで機能性が高い(机や椅子が多くコンセントが付いていることが多い)場所でした。


それではQGISに関連するトピックを中心に報告していきます。
ワークショップ(11/17〜11/18)
ワークショップは午前または午後の半日枠で、2日間開催されました。
https://2025.foss4g.org/program/workshops
料金設定ですが、1ワークショップあたり50NZドルで、日本円だと5,000円弱という金額設定でした。内容を考えると非常に安いです。
ワークショップはこちらのような部屋で行いました。

非常に多くのワークショップがありましたが、QGISに関連するワークショップだと以下の通りです。結構ありますね。
- QField & QFieldCloud: Hands-On Fieldwork Workshop
- Cartography for Rebels: Building Beautiful Maps with Free Tools Workshop
- International QField Day Workshop
- QGIS Graphical Modeler: Build Smarter Workflows with Algorithms and Expressions Workshop
- QGIS Plugin Development
- Cloud-based Remote Sensing with QGIS and Google Earth Engine Workshop
- Introduction to QField plugin authoring Workshop
私は今回上記のワークショップを受講しなかったのですが、「Cartography for Rebels: Building Beautiful Maps with Free Tools Workshop」では非常に多くの参加者が参加しており、チラッと見えた講義のスライドも熱量を感じて楽しそうでした。

私が受講したのはQGISとは直接関係のない以下2つのワークショップでした。
- Exploring Cloud-Native Geospatial Formats: Hands-on with Raster Data Workshop
- Running and Auto Scaling Geoserver and PostgreSQL/PostGIS without managing servers in the AWS cloud Workshop
「Exploring Cloud-Native Geospatial Formats: Hands-on with Raster Data Workshop」では、QGISでも利用する機会の多いCOGと、これからの利用が期待できるZarrといったクラウドネイティブなラスター形式を深く理解する・・という内容でした。
このような教育的なワークショップをFOSS4Gで受講することは初めてで、非常に学びとなりました。

イベント期間中はBreakタイムが頻繁にあるのですが、ワークショップの日も休憩時間としてBreakタイムがありコーヒーや軽食が提供されていました。

ワークショップの時のBreakタイムは参加者同士の交流が生まれやすい雰囲気がありました。同じテーブルに座った人と講義の感想を喋ったり、お互いの仕事のことを喋ることができます。
私がお話しした人は、ニュージーランドの技術者の方で、QFieldを使って農園などのマッピングをしていることを教えてくれました。コアデイでも感じましたが、ニュージーランドはQFieldの普及率・・というか、現場での活用が日本より進んでいると感じました。

カンファレンス(11/19〜11/21)
カンファレンスでは多くのセッション発表があったり、豪華なディナーイベントが開かれるなど今回のメインイベントとなります。
会場にくる人も多くなります。

当然、事前にセッション発表のスケジュールは公開されているので、どの発表を聞きに行くかの目処は立てていたのですが、何のセッションを見に行くか再検討するために、私は受付前の「本日のスケジュール」の紙をちょこちょこ見にきてました。

カンファレンスの期間中ですが、ちょっと外せない業務をする時以外は、基本的に気になるセッションをひたすら拝聴してました。
私が聞いたQGISに関連(QFieldなども含む)するセッションは以下の通りです。
- QGIS Feature Frenzy
- QGIS "Ask me Anything" session
- QGIS and Democracy - Defining New Zealand’s Electoral Boundaries
- Fighting Invasive Predators with Open Source | How QField Empowers ZIP’s Mission for a Predator-Free New Zealand
以下2つのセッションは、QGISで最近追加された新機能の紹介と「何かQGISで質問ある?」というもので、QGISのコア開発者に自由に質問できるというものでした。
QGIS LABを購読している皆さんだと、QGIS LABで紹介されていた機能の多くが紹介されていたので、目新しい情報はなかったと思うのですが、改めての振り返り・・ということで、とても面白い時間でした。
質問コーナーでは、「MacでもWindowsと同じレベルでQGISの機能をなぜ使えるようにできないの?」という質問や、QGIS Serverの動向に関する質問などがありました。
回答としては、「限られた予算でやっているので、多くのユーザーに貢献できる部分を頑張っとるんや・・」というものでした(意訳です)。これを聞いて、私は帰国してからQGISに寄付することになります。


こちらのセッションは印象的でした。
公開されている概要を日本語に機械翻訳すると以下の通りなのですが、私が知りうる限り最大規模のデータ量でQFieldCloudを使った野外調査の効率化を成し遂げられていました。こんなふうにFOSS4Gのツール群を上手に活用し、現場に落とし込ませた業務改革を成し遂げたいと思いました。
ニュージーランドを拠点とする慈善団体Zero Invasive Predators(ZIP)は、侵略的捕食動物を駆除し、ニュージーランド固有の生態系を回復するという大胆な使命を掲げています。この課題に取り組むため、ZIPは強力なオープンソースの地理空間スタック(QGIS、QField、QFieldCloud)を活用し、技術計画と現場作業を連携させています。
この講演では、QFieldとQFieldCloudを活用して、ZIPの現場チームが遠隔地で正確なデータを効率的に収集し、更新情報を瞬時に同期する方法を紹介します。このほぼリアルタイムのフィードバックループにより、侵入種対策において迅速かつデータに基づいた意思決定が可能になります。

セッション発表では、QGISに関連するトピック以外にも実に多様なFOSS4Gに関する発表がありました。知らない技術や最近の技術トレンドをキャッチアップできる貴重な機会なので、普段QGISしか触らない人にとっても、QGIS以外の発表を聴くことで得られるものは多いと思いました。
個人の感想ではありますが、FOSS4G Auckland 2025ではZarrの発表や関心が高かったように思えました。

また、MIERUNEから参加した3名はそれぞれ発表もしてきました。
発表についてはこちらで参加報告をしているので、気になる方は見てみてください。
そしてカンファレンスのClosing Ceremonyでは、来年度のFOSS4G Globalの開催地の発表がありました。
場所はなんと、日本の広島!!
ということで、来年度は飛行機の費用を気にしなくても、この素晴らしいイベントに参加できることになりました。

開催概要はすでに公表されています。予定を確保したり、所属企業に参加を掛け合うなど動き始めることをオススメします。
QGIS Community Day Event(11/22~11/23)
メインイベント終了後の土日にCommunity Events and Code Sprintsが開催されました。
参加は無料で、FOSS4Gの開発だけでなく、翻訳、ドキュメント作成、フィードバック、ディスカッション・・などなど、自分の技量や興味が交差する部分で参加することができます。
https://2025.foss4g.org/program/community-day
実際の参加者自体はかなり少なく、20人はいなかった程度だと思います。
決まった部屋が用意されているわけではなく、「空いているスペース自由に使っていいよ!」ということだったので、なんかみんなで自然と集まって、それぞれもくもく作業をしたり、質問したり・・と、なかなか自由な空間ではありました。
私はこの場で、疑問に思っていたことを、直接聞きたかった人に質問できて、非常に有意義でした。
ただ、FOSS4Gへの貢献をこの場ではできなかったのが心残りでした。勝手はわかったので、来年のイベントでは、何かしっかり貢献できるように努力していきたいと感じました。

最後に
FOSS4G Auckland 2025は、技術的な学びだけでなく、世界中のFOSS4Gコミュニティの人々と交流できる素晴らしい機会でした。

私にとっては初めての海外FOSS4Gの参加でしたが、インターネットで知っていた有名な人や普段お世話になっている技術やソフトの開発者と交流することができて、非常に感動しました。安っぽい言い方にはなりますが、「世界は繋がってるんだな〜」と感じ、「自分も何か貢献していかねば・・」とモチベーションが高まりました。
来年の広島開催では、日本からもっと多くの方が参加し、このコミュニティの一員として貢献できることを楽しみにしています。
QGIS LABの読者の皆さんも、ぜひFOSS4G Hiroshima 2026への参加を検討してみてください!



大学時代はハンマーと野帳を手にフィールド調査へ繰り出す地質屋。 大学卒業後に就職した建設コンサルタントでGISに触れ、その楽しさを知る。 次第に「GISを使う側」から「作る側」へと興味が移り、株式会社MIERUNEにGISエンジニアとして転職。 これまでの経験を活かし、GISの活用方法に関するコンサルティングからソフトウェア開発までを行っている。