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QGISが誕生20周年を迎えました!

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この記事でわかること


  • QGISの歴史

こんな人におすすめ


  • QGISのこれまでの発展に興味がある方
  • OSSの開発に興味のある方

はじめに

この記事ではオープンソースの地理情報システム「QGIS」の歴史について、バージョン1.0から現在(バージョン3.X)まで、簡単にご紹介します。

この記事は、株式会社MIERUNEのホームページで掲載されていた「QGISブログ」の内容を改訂して掲載したものです。

オープンソース GISの誕生

2002年2月にアラスカ州アンカレッジの開発者、Gary Sherman(ゲイリー・シャーマン)氏が地理空間情報を扱うデータベース「PostGIS」に格納されている地理空間データを可視化するために、趣味でGISのアプリケーションを作り始めたところからQGIS誕生の歴史が始まります。彼は仕事で学んだ知識を活かし、プログラミング言語の「C++」とGUI開発フレームワークの「Qt」を使用してオープンソースの地理情報システムを単独で作成しました。

そして、ソフトウェアのバージョン管理システム「Sourceforge」でWeb上に公開し、2002年7月にQGISの最初のバージョン「Quantum GIS 0.0.1-alpha」がリリースされました。この時のリリースはベクタレイヤを画面に可視化することはできましたが、それ以外のことはほとんできない状態だったそうです。

その後、彼がWeb上で全世界に公開したQuantum GISに興味を持った人たちが現れます。中には今以上の機能がついたもっと便利な地理情報システムを見てみたいという声が上がり、その人たちが次第に開発の貢献者となります。そしてQuantum GISは彼の単独開発から、貢献者によるチームで開発を進めていくこととなり、様々な機能やツールが次第に導入されるようになりました。そこからQuantum GIS(QGIS)が少しずつ成長していきます。

バージョン1.0のリリース(2009年1月)

バージョン1.0のスプラッシュスクリーン
バージョン1.0のスプラッシュスクリーン(出典:SPLASH SCREEN QGIS | pigrecoinfinito)

最初のリリースから約7年後の2009年1月にバージョン1.0がリリースされます。QGISはリリースごとにコードネームがつけられており、この頃のコードネームには衛星の名前が付けられていました。1.Xの初回リリース時のコードネームは「Kore(コレー)」で、木星の第49衛星の名前です。

バージョン1.Xの操作画面

バージョン1.XのUI
バージョン1.XのUI

レイヤ機能の色分け属性テーブルの編集空間解析といったGISの基本的な編集機能に加え、ベクタ形式のデータだけでなく、ラスタ形式のデータにも対応するようになりました。プラグインによる拡張機能の開発言語は今まで「C++」を使用して開発をしていたそうですが、新たに「Python」を使用したプラグイン開発が可能になりました。なお、現在のQGISのプラグイン開発はPython言語が主流になっており、さまざまな分野のニーズに合ったプラグインが多数提供されています。

バージョン1.Xのアイコンデザイン

バージョン1.Xのアイコンデザイン
バージョン1.Xのアイコンデザイン

当時のアイコンデザインは黄色の「Q」に緑色の矢印がついたデザインでした。

バージョン2.0 のリリース(2013年9月)

バージョン2.0のスプラッシュスクリーン
バージョン2.0のスプラッシュスクリーン(出典:SPLASH SCREEN QGIS | pigrecoinfinito)

最初のリリースから約11年が経過した2013年9月にバージョン2.0がリリースされました。2.Xの初回リリース時のコードネームは「Dufour(デュフール)」。スイスとイタリアとの国境にあるモンテローザ山塊の最高峰の名前だそうです。

このころはコードネームに都市や地名の名前が付くようになります。また、QGIS Developer Meeting の開催地の地名が付けられることもありました。スプラッシュスクリーンの背景には、コードネームの地名の場所が表示されるようになります。

バージョン2. 0のリリースからは「QGIS」に名前が正式に変わりました。元々「Quantum GIS」と「QGIS」の二つの名前が使われていたそうですが、混乱を避けるために「QGIS」に名前を統一したそうです。

バージョン2.Xの操作画面

バージョン2.XのUI
バージョン2.XのUI

GUIフレームワークQtのアップデートに合わせ、アイコンデザインも変わりました。地物の面積計算やフィルタリング、属性フィールドの項目追加など多岐なことができるフィールド計算機や、プラグインの管理やインストールがより手軽にできるプラグインマネージャーなどが導入されました。また、Android 用の QGIS「QField」 が登場し、フィールドワークにも対応したモバイルプラットフォームにもQGISが進出しました。

バージョン2.0以降からはQGIS.orgのホームページでアップデート情報の変更点や新機能を分かりやすくまとめたビジュアルチェンジログが記載されるようになりました。現在でもQGISがバージョンアップされるたびに、このページで新機能が紹介されるのでチェックすると良いでしょう。

バージョン2.Xのアイコンデザイン

バージョン2.Xのアイコンデザイン
バージョン2.Xのアイコンデザイン

アイコンのデザインも前回より少し雰囲気が変わり、立体感が少し和らいだ表現になっています。

バージョン3.0のリリース(2018年2月)

バージョン3.0のスプラッシュスクリーン
バージョン3.0のスプラッシュスクリーン(出典:SPLASH SCREEN QGIS | pigrecoinfinito)

最初のリリースから約18年後の2018年2月にバージョン3.0がリリースされました。これが現在のバージョンになります。3.0リリース時のコードネームは「Girona(ジローナ)」。スペインカタルーニャ州の都市名で、第15回「QGIS Developer Meeting」の開催地です。

バージョン3.Xの操作画面

バージョン3.XのUI
バージョン3.XのUI

画面上の地図データの読み込みが非同期方式(XYZ方式)になったことでレンダリングの機能が向上し、動きがよりスムーズになりました。また、画面内のドッグの配置を自由に変更できたり、カラーホイールやスライダーによる直感的なスタイリング操作など、UIが大幅に改善されました。さらに、プラグインによる拡張機能でしか実現できていなかった3Dビューの機能が標準で実装され、地物や背景地図を立体的に表示することができたり、時系列によるアニメーション表示が可能になるなど、地図の表現の幅も広がりました。

バージョン3.Xのアイコンデザイン

バージョン3.Xのアイコンデザイン
バージョン3.Xのアイコンデザイン

アイコンのデザインも一変し、前回のロゴの配色に使われた黄色と緑を引き継ぎ、そこにオレンジのワンポイントが入った3色を組み合わせたデザインになりました。バージョン3にちなんで配色を3色にしたとも言われています。

おわりに

QGISは創設者のGary Sherman氏による単独のプロジェクトから始まり、20年間の進化を遂げ、世界で最も人気のあるオープンソースGISとなりました。これはQGISの開発プロジェクトに献身的な多くのユーザーが関与し、オープンソースに貢献し続けたおかげです。QGISのソースコードはGithubリポジトリから入手でき、バグの修正やアプリケーションの新機能の追加などを支援でき、だれでも自由に貢献することができます。MIERUNEもQGISのオフィシャルスポンサーとして、QGISコミュニティへの支援に継続的に取り組んでいきます。

QGIS20周年、おめでとうございます!

参考文献

  • Founder of QGIS: Gary Sherman
  • QGIS - wkiwand
  • Quantum GIS - GIS Wiki|The GIS Encyclopedia
  • Adoption of a new logo for QGIS 3.0
  • QGIS Open Session: a walk through time and QGIS with Tim Sutton & Gary Sherman
この記事を書いた人
QGIS LAB編集部
QGIS LAB編集部

QGIS LABは、オープンソースのGISソフトウェア「QGIS」に関する総合情報メディアです。「位置と情報で世界を変える」をコンセプトに、位置情報で世界を拓くための知識と技術をお届けします。

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